卸業者は、こう打ち明けた
 福島県産米の産地偽装はどのように行われるのか。
 ある卸業者は、こう打ち明ける。
 「福島県の新米を県外で売り捌こうとすると、いくら『旨いから』『検査済みで安全だから』と言っても、
袋に福島県と入っているだけで取引相手は引いてしまう。でも買ってもらわなきゃならない。
 結局、買ってもらうんだが、その際、『一空袋でも何でもいいから、
他県の袋に入ったコメなら引き受ける』と条件をつけられる。相手にも取引先がいっぱいあり、
現物を倉庫まで見に来る業者がいる。
 そんな人たちに『福島県産の袋は見せられないし、見せたら商売が成り立たなくなる』と言われる。
こっちも買ってもらわないことには首が回らなくなるから、意に反して一空袋を使わざるを得ない。
だから、このとおり、県外産の空袋を山ほど集めたんだ」
 こうした売り手と買い手が納得し合ったうえでの偽装商法がまかり通っているが、消費者は知る由もない。

関西に運ぶ途中で偽装
 別の卸業者は、大型コンテナ車で関西の同業者に新米を運んでいる。
 「関西に行くには、まず磐越自動車道で新潟県に出て、それから富山、石川、福井、滋賀県、京都府を通って目的地へ向かう。
遠回りだけど、じつは途中で、福島県の新米を×県の新米に化けさせる段取りができているんだ。
一空袋で運んだものを、×県の新袋に詰め替えるだけだから、単純な話だ。
関西の取引相手も『それなら堂々と引き受けられる』と喜んでいるし、出来レースというわけさ。
バレたら一大事なんで、運搬はかならず自分でやって、他人には任せないのが鉄則だ」
 今も大量搬送が続いているし、この状態が「来年2月ごろまで続く」という。
X県産となって関西に流れた「福島県産米」がどこへ行くかというと、西日本全域だけでなく、
多くは首都圏に北上して流通する。首都圏の消費者は、西日本産なら安心・安全と考えているからだ