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仏教が生まれた紀元前5世紀ごろのインドには「書く」という手段や文化がなく、ブッダの教えは弟子たちの口伝によって広められました。その後、書物としても多くのものが作られましたが、それは異なる国や時代を越えて伝わる過程で、当然、変化していきました。
今、私たちがイメージする仏教、お葬式をしたり、極楽浄土や生まれ変わりといった考え方も、後に付け加えられたものです。
仏教は6〜8世紀に全盛期を迎え、チベットやネパール、日本にも伝わりました。しかし13世紀ごろになると、ヒンドゥー教やイスラム勢力が台頭し、インドでの仏教は衰退していきました。
一方、チベットでは、民族のアイデンティティとして、大切な心の拠り所となりました。チベット仏教は、今も本来の姿をかなり忠実に守っており、仏教のルーツを探ろうとすれば、チベットに行き当たるのです。
もちろん近代化に伴って、僧侶の在り方も変わっていますが、今でも出家する人は多く、一家に僧侶になる者がいることは名誉だと考えられています。
しかしながら、仏教にとって激動の時代ともいえる10〜13世紀の資料はほとんどなく、研究としては停滞していました。

ところが、2000年代に入ってから、何百冊にも及ぶこの時期の書物が、中国の寺院から発見されました。おそらく、17世紀ごろにダライ・ラマが集めて隠しておいたものだろうと言われています。
多くの寺院が破壊された文化大革命を経ながら、これだけの資料が残っているのは奇跡的です。現在、世界中の研究者がその解読に取り組んでいます。