つづき
さらに茂吉は『日本人種の霊的考察』と題する一文の中で、日本民族には四つの系統があるとして、独自の古代
史観を披露している。伊都能売神皇・天照天皇確立していた純粋の大和民族と、中国の磐戸神王を祖先とするニ
ニギノ尊の天孫民族、韓国に発するスサノオ尊の出雲民族、コーカサス地方から蒙古、満州を経て東北に上陸し
た「土匪」の四つの系統があったといい、すべての歴史過程はこの四つの勢力によるせめぎあいのなかで展開さ
れたという。

なお、真光でも主神の次に祭っている、「伊都能売神皇」はスサノオの出雲族から逃れ、インドに渡り観音に
なったといい、このあたりは「救世教」の核心をなす、観音信仰の背景として位置づけられているようである。
一般に「世界救世教」というと、昨今は内ゲバ騒動、ダ・ヴィンチ事件のみ有名をはせ、宗教学者の間でも、
浄霊と呼ばれる手かざしによる病気治療や自然農法といった側面に置いて議論される程度であったが、岡田茂吉
には、大本や古史古伝の世界と通底する霊的イマジネーションの世界があったことは銘記されてよかろう。

ところが、岡田茂吉の没後、「救世教」は妙な合理主義とりつかれたのか、こういった、いわば教祖の神秘的な
世界観を幽閉して今日に及んでいる。実際、今引用した『日本人種の霊的考査』なども現在は公的に頒布されて
いない状況にある。深刻な内部葛藤の時期にある現在なればこそ、おのがは教団の出現に対して、教祖自身が行
った神話的な意味付与について研究がなされてしかるべきだと思うのだが・・・・