穴かしこ
未発表、笑和会第19回月並笑冠沓句、昭和8(1933)年9月16日
 次に下のガラクタ共を述べんに之は前者より罪はなけれど又始末に困る代物なり一見すれ
ば普通の人間の如く五感五体を具へ飯を食ひ空気を吸ひ糞を垂れてをれども殆んど生きた
ロボット同様にして何等の能はなく事ある毎に人の尻馬に乗り附和雷同ただワイワイ騒ぐの
み一名弥次馬とも言ふなり随而屁のやうな噂にも踊り上り女なれば風船玉のやうに尻が軽く
善も悪も無茶苦茶にして一生懸命神業の御邪魔をなしロハ酒と御玉串を目的に祭官をなし
信者の女房をソヽノカシては聖地を汚し命を救はれたる恩人に対し小便をヒツカケる事など
屁とも思はず先輩の悪口を放ち常に大法螺を吹き女とさへ見れば特別に親切に見せ物に
せんとする怪しからぬ奴にて全く人間の屑なり又中には平然として家賃を踏み倒し親切に
金を貸して呉れたる人に対し其金を借り倒し却てめぐりを取つてやつたなどとホザク神様の
領分を犯す怪しからぬ野郎もあり又御神業とは人の悪口を言ひ信者を横取りして己れの
支部を発展させんと謀むヘナチヨコもあり愛善の愛は紺屋の藍と思ひ善は飯食ふ台位に
しか思はず実に情なき亡者共なり止むを得ず一所へ集めて灰に致すより外なく塵芥にも比
すべき身霊なり又高等学府を出でても神の存在を知らず夏の夜を裸で寝てゐる如くカガク
フカガクフと科学一点張りにて少し金廻りのいゝ代物が人間を廃業して日比谷ケ原の蛙とな
り又神妙な奴が会社や役所へ行つて米搗バッタとなり虫ケラ同然の生活に甘んじ銭のない
奴は蚊のなく如くブンブン不平をならして三文蚊士となるなり又ルンペンになつた奴は心落
ちつかずいつもセツカセツカし少し威勢のある奴がフワツショフワツショと山賊の親分を担ぐ
位が関の山なり何れ神が表に現はれるや否やコヤツ等は眼をマルクスしたり官憲にヒット
ラへられたりする憐れはかなきコンマ以下の蛆虫共なり