元暴力団組員という異色の経歴を持つ神戸弟子教会(神戸市灘区)の牧師、森康彦さん(58)が、傷付いた若者たちを受け入れる活動を続けている。
親からの虐待や薬物使用など、さまざまな事情で平穏な生活を失った少年・少女たちに寄り添い、
これまで約50人を社会に送り出してきた。森さんは「人生はいつでもやり直せる」と静かにエールを送る。

 東京都出身。中学時代から遊び友達と薬物の使用や売買を始め、大学中退後、24歳で組員になった。
クリスチャンになったのは組員時代。キリスト教に触れた暴力団仲間からの誘いで、教会に通うように。
組織の幹部にまで上り詰めたが、薬物にのめり込み、仲間とのトラブルが原因で43歳の時に組から破門された。
「十分好き放題やってきた。これからは神に尽くそう」。そう改心し、東京を離れ、名古屋と神戸の神学校で学び、2010年10月に神戸弟子教会を開いた。

 同じ頃、経歴を知った教会関係者などの依頼で、少年院を出た少年を預かるようになった。
行き場がなく、再犯する少年もいた。そうした子どもたちを救おうと11年、NPO法人「ホザナ・ハウス」を設立。
原則15〜19歳の自立援助施設と、虐待を受けた少女らを保護するシェルターを作り、現在は15〜24歳の7人が生活する。

 11月中旬の日曜礼拝。約20人の信徒らの前で、はつらつと賛美歌を歌う女性(24)の心地よい声が響いた。
女性も森さんに保護された1人。親の虐待や離婚、いじめがきっかけで小学4年で学校に行かなくなった。仲間と遊ぶ昼夜逆転の生活が始まり、薬物使用などで少年院に3回送られた。
「大人なんて信じられなかった。でも寂しかった」。1年前から教会に通うようになり、森さんを「一番の理解者。『普通』を押しつけず素の自分を受け入れてくれる」と父のように慕う。

 森さんのもとにやって来る若者の多くは、何らかの生きづらさを抱えている。
森さんは「孤独でもがきながら生きる子どもたちに、無条件の愛を注ぎ、前に進む力になりたい」と誓う。【藤田愛夏】

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