第27則? 雲門体露金風(うんもん たいろ きんぷう)
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垂示の現代語訳
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一を問えば十を答え、一を挙げれば三を明らめるような明敏な人は兎を見ては鷹を放ち、風向きを見て、火を起こすように親切に指導する。
しゃべり過ぎて眉毛が落ちるのも厭わず親切に説法指導することは別に置こう。
ただ「虎穴に入る」ような必死の勇者が現れた時はどうしたら良いだろうか。
試みに例を挙げるので参究せよ。
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本則:
修業僧、雲門に問う、「樹凋み葉落ちる時如何?」。

雲門云く、「体露金風」。

 僧、雲門うんもんに問う、「樹凋しぼみ葉落つる時如何いかん」。

門云もんいわく「体露金風」。

注:
雲門:雲門文偃禅師(864〜949)。雲門宗の開祖。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷→天皇道悟→龍潭崇信→徳山宣鑑 →雪峯義存→ 雲門文偃
樹凋み葉落ちる時:ブッダが沙羅双樹の下で涅槃に入った(入滅)時、沙羅双樹の1本が枯れ、樹皮も枝葉も抜け落ち、唯真実のみが残った、という「大乗涅槃経」に見える喩えを踏まえている。
ここで樹の葉は煩悩妄想を象徴している。
体露:真実ありのままに打ち出す。
金風:秋風。陰陽五行説より来ている。木(春)火(夏)金(秋)水(冬)の対応関係がある。
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本則:
秋が深まって冬に入ろうとするある日、一人の僧が雲門に聞いた、
「樹木の葉が紅葉した後凋み落ちつくした冬景色の時はどうですか?」。
雲門は云った、「体露金風」。



この修行僧、悟後のひとだね。
生死(しょうじ)を問う。
または、修業の完成を問う。
こうあるべき、との固定観念の奴隷である。
老婆の問いに、枯木寒厳に倚る、 三冬暖気無し(こぼくかんげんによる、さんとうだんきなし)と答えた修行僧と同じことを問う。

丸出しの秋の風が吹いてる、と雲門は答える。

首を切り落とすかたなが、風になって通り過ぎていく。

その秋の風、金風 である。

無と言い、空と言う。
一切皆空(いっさいかいくう) である。