碧巌録(へきがんろく) 第91則? 塩官犀牛   
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試(こころ)みに挙(こ)す看(み)よ

塩官斉安、一日(ある日)、侍者(じしゃ)をよぶ。「我がために犀牛の扇子をもち来たれ」。
侍者云く、「扇子破れぬ」。

官云く、「扇子すでに破れなば、我に犀牛児を還えし来たれ」。
侍者対なし。

投子(とうす)大同禅師、云(いわ)く、「もち出さんことを辞せず、恐らくは頭角全からざらんことを」。

雪竇(せっちょう)拈(ねん)じて云く、「我は全からざる底(てい)の頭角を要す」。

石霜(せきそう)慶諸 云く、「もし和尚にかえさば、即ちなからん」。

雪竇拈じて云く、「犀牛児なおあり」。

資福如宝、一円相(いち えんそう)を画し、中において一の牛の字を書す。

雪竇拈じて云く、「適来なんとしてかもち出さざる」。

保福従展、云く、「和尚年尊、別に人を請せば好し」。

雪竇拈じて云く、「惜しむべし、労して功なきことを」。