四祖道信大師の話

四祖道信(しそ・どうしん。
五八〇〜六五一)大師は、中国禅宗の第四祖である。
湖北省広済県の生まれで、俗姓は司馬氏、生まれながらに人に優れ、幼くして仏法の解脱の教えを慕うさまはあたかも前世の宿縁のようだった。
はたして十三歳にして三祖に師事し、法を嗣いで四祖になった。
常に禅定を修して横にならず、脇(わき)席に至らざること六〇年といわれる。

隋の時代に吉州(きっしゅう。
江西省中部)に住していたとき、町が盗賊の群れに包囲され、七〇日たっても囲みが解けなかったことがあった。
人々が恐れおののくのを見て四祖は哀れに思い、摩訶般若を念ずることを教えた。
するとそれ以後、盗賊たちが町の城壁を見上げると、町を守っている神兵の姿が見えるようになった。

「これは城内に異人がいるに違いない。攻めるのは危険だ」。
そう言って盗賊たちは引き上げていった。