ある主婦が、自分の子供とその同級生数人を連れ、ドライブに出かけた。
車はワンボックスカー。
子供たちはまとめて後部席に乗せ、騒ぐにまかせる。
どうせ静かにしろと言って聞くはずもない。
ワンボックスカーには、サンルーフが付いている。
子供たちは車の中で立ち上がり、交代でサンルーフから顔を出して景色を眺めていた。
車が、とある立体交差に近づいた。
今、主婦の車が走っている方は、トンネル状になっている。
地形の関係で、車の車高制限があり、トラックなどは通過できない。
主婦にとっては、いつも通っている慣れた道であった。
このワンボックスカーは、ぎりぎりで通過できるのがわかっている。
立体交差を通過してしばらくしてから、主婦は子供たちがやけに騒いでいるのに気づいた。
それが、尋常の騒ぎ方ではない。
主婦は路肩に車を停め、後部席を振り返った。
子供の1人が、血まみれになって倒れていた。
主婦はすぐに病院に連れて行ったが、子供はすでに死亡していた。
その子供は、車が立体交差を通過する時、サンルーフから顔を出していた子供だった。
後ろの風景を見ていたため、立体交差に気づかなかったのだ。
立体交差の天井と車の屋根との距離は十数センチしかなかった。
子供の後頭部は、立体交差の天井のコンクリートに削り取られ、ほとんど残っていなかった。
死んだ子供は、主婦の子供ではなかった。
それが良かったのか悪かったのかは───不明である。