現に、福祉事務所では、窓口に訪れた人に生活保護の申請をさせず追い返す「水際作戦」がおこなわれてきた。
貧困問題に取り組んできた稲葉剛・立教大学大学院特任准教授の『生活保護から考える』(岩波新書)によれば、
「水際作戦」が一般化したのは1980年代からで、バブル崩壊後の90年半ばになると、東京や大阪などの都市部の
福祉事務所では〈相談に来る路上生活者に対して、差別的侮蔑的な言動を用いて追い返す、相手をわざと怒らせ
るような言動をして席を立たせる、ということが日常的に行なわれていました〉という。

「どこの馬の骨かわからない人に生活保護は出せない」
「仕事なんてえり好みしなければ、いくらでもある」
「病気があると言って甘えているが、日雇いでも何でもして、自分の金で病院に行くのが筋だ」
「あんたが悪いんだから、頭を下げて実家に戻りなさい」
「あんたは性根が腐ってる」

 これらの罵詈は稲葉氏が生活困窮者の保護申請に同行した際、福祉事務所で実際に耳にしたという言葉だ。
これでは取り付く島もないが、小田原市のジャンパーと同根の問題である。