「77年になると、ロックがつまらなくなるんですね。
イーグルスの『ホテルカリフォルニア』が76年なんですが……
“そこでロックは終わった”って言われていて、
本気でロック全般がつまらなくなるんです。
高校の仲間でも、ロックが面白くなくなってしまったことが問題になり始めていて。
アメリカのシンガーソングライターものも、76年頃にはダメになって。
マイケル・フランクスが出てきたりするんだけど、
AORというジャンルも最終的に物足りないというか、
ミエミエの音楽に思えていたんですね。
それで僕らは、ロキシー・ミュージック、10cc、スパークスなどの
ブリティッシュに転向せざるをえなくなっていく。

でも何か違うな、と思っていた。
そんな状況の中で、セックス・ピストルズが出てきて、
パンクムーブメントが起こります。パンクを体験したあとに、
僕らは、(細野さんが結成した)YMOとか、
(大滝さんの)『A LONG VACATION』を聴いてるんですよね。
ただ単に、素直にYMOとか大滝さんを聴いていたファンもたくさんいると思うけど、
細野さん、大滝さんが体験している音楽の荒波、
時代の変化を本当の意味で考えるためには、
パンクを通らないと疑似体験できないし、
『A LONG VACATION』での大滝さんの変化は分らないかもしれない。
リスナーの感覚としては、
海外の音楽シーンの、パンクによる挫折と再生を体験し、
それでまたはっぴいえんどに戻っていくということなんですね。

松本さんに関しては、細野さんや大滝さんとはフィールドが違うって
我々も認識していました。
“ちょっと遠くに旅をしているんだ”と思っていましたね。
だから、はっぴいえんどのメンバーで歌謡曲を作るようになって
――80年以降ですよね――“絆がもどった”みたいな感覚がありました」