桑田佳祐が紫綬褒章のメダルをポケットから出してみせた…、たったそれだけのことで「不敬」として断罪する日本国民は「ムハンマドを侮辱した」と憤るイスラム教徒とほぼ同じ地平にいる。
そこは「表現の自由」という蚊帳の外だ。もしかしたらサザンはずっと、デビューから何十年間も政治的なメッセージソングをその時々に唄っていたのかもしれない。
メディアで取上げられ始めたのは最近のように思う。年末のネットニュースでは、安倍政権を軽く揶揄した替歌を安倍首相の前で披露したとか。
『ピースとハイライト』という曲では最近の「嫌韓憎中」という風潮を批判していたり。紫綬褒章の記念品をポケットにしまうことには照れ隠しもあるだろう。
こんなもの貰っていいのかというミュージシャンとしてのアイデンティティを疑う意図もあろう。ヒトラー風のちょび髭は当然ながら「熱狂なきファシズム」(想田和広)の時代への「風刺」に違いない。
いずれにしろ、かっこいいじゃないか桑田佳祐。ぼくはファンになったぞ。といってもサザンを聴こうとは思わないが、時の総理も観に行くようなメジャーバンドが政治的発言をする、
そのこと自体がこの國にとって画期的なこと。山本太郎が「反原発」発言をし出した頃、津川雅彦に「芸能人はそんなことを云わないほうがいい」的な注意をされたとかつて語っていたが、
そのことに象徴されるように日本のタレントはほぼ誰も政治的な主張はしない。爆笑の太田くらい?その「物足りなさ」を是非埋めてほしい。たとえ、すぐ「謝罪」する羽目になったとしても。
謝って尚「反日」「在日」と集中砲火を浴びている桑田さん。そもそもロックが「不敬」でなくてどうする?これがぼくのたったひとつのゆるがない信念である。
かつて若松孝二監督は「映画は権力側から撮っちゃダメ」と云った。権力側に立つな、そういう意図だと思う。ロックは尚更である。ロックをやる以上、そこは腹を括ろうよ。
サザンはロックバンドじゃないのかもしれないが、J-POPのトップランナーだってこうして頑張っているのだから。