>>496のつづき
『眼鏡っ娘有希』
 有希が通う高校は電車で12分。そしてさらにバスで10分の所にある。今日から有希の高校生活が始まった。有希の家は以前は農家だったが、周囲の宅地化で土地を賃貸し、残りの農地で野菜と花卉を栽培している。
4月中旬の日曜日の朝、有希は温室栽培の花の水やりに行った。温室の中と外気の温度差があり、有希は温室に入ると、メガネが曇った。いつものことなので、有希は人差し指でレンズの内側と外側を拭いた。それで、
レンズの曇りを取る。作業終了後、温室を出るとタオルでメガネを拭いた。家に帰って、居間の茶箪笥の引出しを開けて、ドライアイの点眼薬を出すと、メガネを近くのラックに置いて目に点す。近眼の目にしみ込んで
爽快になった。その時、隣の部屋から母の呼び声がした。
 母 「有希。今日は春祭りだから笹寿司と赤飯つくったわ。それと皿に盛った食べ物が8皿くらいあるわ。こちらへ来て!」
有希は点眼薬を元の場所に返すと、メガネをかけないまま隣の部屋へ行った。
 有希「この皿は何かしら?」
と言って、有希は両手で皿を持ち上げて目から10pくらいまで近づけて見た。
 有希「なあーんだ。タラの芽の天ぷらか。これ大好きよ。」
 母 「有希はメガネなしだとそんなに近づけないと見えないのね。」
 有希「そうだわ。メガネ取って来なくちゃ。」
(つづく)