「宇宙際タイヒミューラー理論サミット 2016」 (Inter-universal Teichmüller Theory Summit 2016) (研究代表者 京都大学 数理解析研究所 教授 望月 新一)

【背景,目的等】
整数の加法構造(=「足し算」)と乗法構造(=「掛け算」)がどのように絡 まり合っているか,その絡まり具合の解明は整数論において最も重要かつ中心 的なテーマの一つである。
2012 年 8 月,望月新一(代表者)はこの絡まり具 合を解明する上において重要な道具となることが期待される「宇宙際タイヒ ミューラー理論」に関する連続論文をプレプリントとして発表し,その理論の 帰結となる「ABC 予想」の証明が注目を集めた。
この連続論文の発表を受けて, ・山下剛氏(京大数理研・講師)は 2012 年 10 月以降, ・Mohamed Saïdi 氏((英)エクセター大学・教授)は 2013 年 7 月以降, ・星裕一郎氏(京大数理研・講師)は 2014 年 1 月以降,
そして ・Ivan Fesenko 氏((英)ノッティンガム大学・教授)は 2014 年 12 月以降, 望月と共に,この理論の検証と更なる発展を中心的なテーマとする共同研究を 行なっており,特に理論の本質的正しさを確認している。
この(望月を除い た)4 名の研究者以外にも,Chung Pang Mok 氏((米)パーデュ大学・准教授, 2014 年〜)等,理論の大部分をある程度理解している研究者が数名いるよう である。
「宇宙際タイヒミューラー理論」は現在のところ,理論の「本体」を扱うプ レプリントと,それ以外の多数の「準備」の(出版済みの)論文に分散して書 かれている状態にある。
1990 年代半ばから 15 年以上にわたって望月が行なっ てきた研究を記述した関連論文やプレプリントの合計頁数は(勘定の仕方に よっては)1500 〜 2000 頁に上るが,このような状況は理論の本格的な普及の 大きな妨げとなっているようである。