この時点で私、恐怖で半泣き。
そして私の両肩を掴み一言
「大丈夫か!?」
こっちのセリフだ。
どこの世界に頭から流血しながら擦り傷+打撲の軽傷者を心配するアホがいるのか、と半泣きながら心の中でつっこんだ。
ビビりながらも事の経緯と怪我の状態を説明すると
「そうか…大丈夫か…」
と盛大なため息をつく兄。
そんな反応に戸惑ってたら、兄は事故った私よりも重傷と見なされすぐに看護婦さんに処置室に連れていかれた。

待合室で兄の友人が苦笑しながら話してくれた内容によると。

兄は友達5人と飲んでいたらしいのだが、兄は私が事故ったというメールを受けたとたん店を飛び出し友達(酒飲めない人だから飲酒運転にはならないよ)のバイクを強奪。
ノーヘルのまま大通りに飛び出た瞬間車に接触し転倒、頭を強打し流血。
慌てて追いかけてきた友達と車の運転手に「妹が事故ったんだ!!早く行かないといけないんだ!!」と怒鳴りながらまたバイクに跨がったらしい。
大の男5人がかりで慌てて取り押さえたが、暴れる暴れる。
(飲酒運転で捕まるから)バイクはやめてタクシーにしろ!!という友達の説得に渋々応じ、流血する頭をタオルで押さえながら病院へ来たそうだ。
「酔っぱらってたとは言え普段は静かなあいつがあんなに取り乱したのも初めて見たよ。しばらくは酒の席の話の種になるな」
と友達は笑っていた。

いつも無口な兄がそんなあんな風に取り乱していたのを私も初めて見た気がした。

それから私は多少なりとも兄と仲良くなっていった。
たまに買い物に付き合ってもらったり、以外にも甘いものが大好きでケーキとかシュークリームとかを買っていってあげると喜んだり、猫が好きだったり。
付き合っていくうちに今まで知らなかった兄の色んな面が見えてきて、すごく優しくて男らしい兄だと気付いた。
それと同時に、見た目で怖いと判断して敬遠していた自分が恥ずかしくなった。

ごめんなさい兄さん。
馬鹿な妹ですがこれからも仲良くしてね。

追記。
兄の頭の傷は5針縫うケガで、額左側の生え際に傷が残った。
「強面の迫力が増した」
とへこむ兄が何だか可愛かった。