最終処分地見通せず
 むつ市のリサイクル燃料貯蔵(RFS)の施設は「中間貯蔵施設」と呼ばれる。
中間貯蔵とは「ここで最終処分するのではなく期限が来れば運び出す」という意味だ。
RFSの施設の場合、使用済み核燃料の保管期限は「50年以内」だ。
 六ヶ所村には「30~50年間」の約束で、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を保管する日本原燃の施設もある。
海外でガラスと混ぜて固め容器に入れた核のごみが1800本以上保管されているが、その最終処分地が決まる見通しは全く立っていない。
 同じように中間貯蔵という意味合いが強調される施設が福島県にもある。
環境省が東京電力福島第1原発周辺に整備中の除染廃棄物の中間貯蔵施設だ。
こちらは「30年以内」に埋め立てた土などを県外に搬出すると約束している。
 ただ福島県民への意識調査によると約束を信じているのは2%だった。
2年前にこの調査結果をまとめた地方自治総合研究所の今井昭主任研究員(64)は
「(搬出できるという)フィクション(作り話)のもとでないと福島の中間貯蔵施設は造れなかった。
下北の核燃関連施設も同じ構図。原子力政策にはこうしたまやかしが多い」と指摘する。

全国のプール 7割埋まる
 電気事業連合会によると、全国の原発の使用済み核燃料プールにたまる燃料は昨年末時点で計1万4900d。
プールの容量の7割が埋まっている計算だ。
このほか、青森県六ヶ所村の再処理工場に隣接する3千dを貯蔵できるプールにも2968dが入っている。
 全国の原発のプールの中では、2011年に事故を起こした東京電力福島第1原発が最も貯蔵量が満杯に近かった。
ともに3,4号機が再稼動した、関西電力の高浜原発(福井県)は今後6~7年、大飯原発(同)は11年程度で満杯になると試算されている。
 北海道電力泊原発(後志管内泊村)は、3号機の営業運転開始が09年と全国で最も遅いため、貯蔵量はまだ4割以下と比較的余裕がある。
 使用済み燃料から再び燃料となるウランとプルトニウムを取り出す六ヶ所村の再処理工場は、
当初1997年に予定した完成時期が24回延期され、まだ稼動していない。
それでも「再処理待ち」の使用済み燃料は99年から受け入れている。
 再処理工場のプールが既にほぼ満杯となる中、今後、行き場を失った使用済み燃料で各地の原発のプールが満杯になれば、再稼動ができなくなる。
電力会社はその事態を恐れている。
このため、プールの代わりに東電などが造ったのがリサイクル燃料貯蔵(RFS)の空冷施設ということだった。
 RFSの施設の受け入れ開始は当初、再処理工場の稼動後と計画されていたが、再処理工場側の相次ぐ延期により順番が逆転した。
地元には「再処理工場が動き出す前に使用済み燃料の受け入ればかりが進めば、下北が核の保管庫になりかねない」との懸念がある。

サイクル事業「破綻」
 使用済み核燃料の「保管庫」となりつつある下北半島の北端で建設されているのが電源開発大間原発だ。
国策の核燃料サイクルの中核を担うとされ、完成すれば下北の「核燃半島」化がさらに進むことになる。
 核燃サイクルは使用済み燃料からまだ使えるウランやプルトニウムを取り出し、燃料として再利用することを目指す。
ただ主な利用先となるはずだった高速増殖炉は原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉が決まり、事実上破綻してり。
 核兵器の原料になるプルトニウムを、日本は核兵器5千発分以上に相当する約47d保有し、
さらに六ヶ所村の再処理工場が稼動すれば年間最大8dが抽出されるため、国際社会の懸念の目が下北に向けられている。
 これを減らすために建設されようとしているのが大間原発だ。
炉心の全てにプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を使うことができる、商業炉としては世界初の「フルMOX炉」となる。
 東京のNPO法人原子力資料情報室の西尾漠共同代表(71)は「大間は電気をつくることよりも、プルトニウムを燃やすことが目的の原発」と指摘し
「何のための核燃サイクルか、本末転倒だ」と話す。