もうひとつ。こちらは第5回福島国際専門家会議(2016年9月)での質問者とのやり取り

http://www.ustream.tv/recorded/91673376
質疑応答(24分頃〜)
(質問者)
大津留先生、さきほど過剰診断の問題をクリアしなきゃいけないとおっしゃったんですね。
で、過剰診断というのはほかの方々からもお話がありましたように要するに一生ほっといても構わない潜在癌を
見つけていると言う風なことだと思うんですけど、去年の8月に鈴木先生が福島の健康調査で、今見つかってる
小児甲状腺の75%はリンパ節に転移している。リンパ節にも転移していない、甲状腺がんに浸潤もない、
遠隔転移もないという人はわずか8%しかない。そういう状況であるにもかかわらず、これは潜在癌であって
一生ほっといても構わないんだという風におっしゃる根拠を教えてください。

(大津留氏)
まず、これは他の先生も話してましたけど、病理学的にみて、例えばリンパ節に小さな転移があるとか、
いわゆる浸潤があるとかということと予後は関係ない、ということは昔から言われていました。
で、甲状腺がんの潜在癌の中には、病理学的な転移とか浸潤のあるなしだけではなくて、
いやそれは病理学的な転移や浸潤も含めた潜在癌があるということはあると思います。
ただですね、もちろん、今現実問題として、診ている患者さん、先ほどから何度も説明あったように
これが潜在癌かそうでないかというのは簡単にはわからないということがあります。

(質問者)
ということは、今福島で見つかっている甲状腺がんが潜在癌だと断定できる根拠がないということですね。

(大津留氏)
潜在癌のオーバーダイアグノシスの問題は、個別の癌がどうかがわからなくても、疫学的にみたときに、
あるいはそういうことが予想されたときにどう対応するかという問題があるのと、今話にあったように
様々な難しい問題が現実問題として起こっている、そういうのに対してどう対応しなきゃいけないか…
神経芽細胞の時も2〜3倍になった時も非常に難しい判断を迫られた。もちろん状況は全然違いますけど、
今回の甲状腺でどう考えていくか、それは例えば20年経過して疫学的な結果が出てからこうしましょうだと
本当に福島の受診していただいてる人のためになるかどうかというと、それでは遅いということがあるので
今考えなきゃいけないということです。