熊本地震の起こる中、遠く離れた東京で一枚の写真が物議をかもしている。
東京メトロの地下鉄火災時の啓発コマーシャルである。
地下鉄火災が起きた時は速やかに逃げましょうというありふれた内容だが、
高齢者の女性と若い女性が避難する中、スーツを着た一般のサラリーマン風男性が
消火にあたるアニメーションが表示される。

たしかに、災害時は自助のほかに「共助」の概念が存在する。
言い換えれば助け合いである。無論、この概念を否定する気はない。
しかし、地下鉄火災は車両の中という特殊環境で起きており、
運転手と車掌、駅係員などのスタッフが多数存在し、駅間も1〜2分と短いものが多い。
その中で、乗客に消火活動をさせることを促すアニメーションははたして適切なのだろうか。

また、ここでもう一つの問題を提起したい。
避難しているのが「女性」であり、消火活動をしているのが「男性」である点だ。
東京メトロは火災時は「女は逃げて、男は死亡や負傷のリスクを冒せ」とでも言いたいのか。
乗客が男女とも避難して、駅係員などの一定の訓練を受けたスタッフが
消火を行うアニメーションでよかったのではないだろうか。

これだけ巷にジェンダー論が飛び交う中、東京メトロほどの鉄道界の
リーディング・カンパニーがいまだに前世紀をひきずっているような
広告を平気でリリースしてしまうことに疑問を呈さざるを得ない。

◎検証画像(東京メトロ車両内で流れている啓発コマーシャルの1コマ)
http://up3.viploader.net/news/src/vlnews083881.jpg