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(ノ /ノ ≡≡ (
/ / / ≡≡(⌒;;≡≡
(_ノノ (⌒;; 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 「──桂」
桂(…封じられていた記憶は、あのとき全部思い出したけど…何らかの力で封じなくても、小さい頃のことって自然に忘れちゃうよね)
「ちょっと桂!聞いてるの!?」
桂「あ…ごめん。何? ノゾミちゃん」
望「なに?じゃないわよ。この私が呼んであげてるのに、まるっきり上の空で…あなたこそ何を考えていたのかしら?」
桂「えーとね…ちょっと昔の事とか思い出してたの」
望「昔?…千年前くらい?」
桂「いや、ノゾミちゃんじゃないんだから…わたし、まだ十七年も生きてないよ」
桂(ノゾミちゃんは見た目は私より幼いけど、彼女が人間だったのは確か千年以上前なんだよね)
望「あ、そう。それで?桂は、いつ頃のことを思い出していたの」
桂「お父さんがいた頃。…今日って父の日だから」
望「ああ、なるほど。それで盆や彼岸でもないのに墓参りってわけ」
桂「うん。普通はお父さんに贈り物をしたりする日なんだけど、私はそれくらいしかできないし…」
望「…」
桂「ノゾミちゃん?」
桂(もしかして…気にしてるのかな。ノゾミちゃんは“主”の分霊に操られてただけで、直接手を下してもいないんだけど)
桂「え、えーと…ノゾミちゃんのお父さんって、どんな人だったの?」
望「…忘れたわ。そんな昔の事」
桂(あ…そういえば、ノゾミちゃん…“お父様に見捨てられた”って言ってたような)
桂(聞いたらマズかったかな…お父さんのこと)ヒヤアセ
桂「…は、墓だけに…墓穴を掘っちゃった感じ?」
望「…なに言ってるのよ」クス
桂(笑ってくれた…よかったぁ)ホッ
桂「うん、やっぱりノゾミちゃんは笑顔が一番かわいい♪」
望「…あなたもね///」
桂「えっ」
望「な、なんでもないわ。…そこまで言うなら、私が笑顔になれる最高の御馳走を頂戴な」ニヤリ
桂(それって…やっぱり、わたしの…血?) 桂「い、今はダメだよ…家に帰ってから」
望「なら、さっさと済ませて帰りましょ」
桂「さっさとって…今日は父の日だよ?」
望「そんなの私は知らないわ。少なくとも、私の父が生きていた頃には聞いたこともなかったもの」
桂(確かに、千年前の日本にはなかったかも…)
桂「いつからあるのかな? 父の日って…」
望「だから私は知らないってば。…ケイタイとかいうのを使って調べたらいいんじゃない?」
桂「あ、そうだね」
桂(わたしが携帯ストラップにしてる青い珠の御守りが、今はノゾミちゃんの依り代。だから当然、携帯を使うときはいつもノゾミちゃんと一緒にいるわけで…)
桂「えーと…最初の父の日は1910年6月19日だったみたい」
望「まだ百年ちょっとじゃない。随分新しい風習なのね」
桂「でもそれはアメリカの話で、日本で定着したのは1980年代…って書いてあるね」
望「いずれにせよ私には関係の無い話ね。…ま、桂の両親の墓参りくらいはしてあげるけど」
桂「そうだね。今はノゾミちゃんが私の唯一の家族なんだから…」
望「柱の継ぎ手…ええと、柚明がいるじゃない」
桂「ユメイお姉ちゃんは…親族ではあるけど、一緒に暮らせないんだもん」
望「それもこれも主が元凶ね」
桂「うん…まあ、その主のおかげで私がノゾミちゃんと出会えたわけだから…それだけは感謝してるけど」
望「そうね…じゃあ、ついでに主の墓標に唾でも吐いてやろうかしら」
桂「わ。…だめだよ。オハシラサマの槐にいたずらしちゃ…」
望「冗談よ。現身をもたない私はそんなことできないし…そもそも柱の樹には近付けないんじゃない?」
桂「んー? 私と一緒なら大丈夫だと思うけど…ノゾミちゃんは悪い鬼とかじゃないんだし」
望「どうかしら。主の呪縛から自由になれたというだけで、私の本質は然程変わっていないわよ」
桂「そうだね。ノゾミちゃんはもともと悪い子じゃなかったもんね」
望「…フン///」 望「ねえ、桂。その白い珠は何?…毬なの?」
桂「んー。似たような物かな。これは硬球っていうの。野球のボールだよ」
望「焼き麩…のぼる?」
桂「野球。スポーツ…えーと、九人対九人で勝負する遊戯なの。…ほら、こんなの」
望「ふーん…それ、形見なの?」
桂「ううん。ボール自体はもっと新しい物だけど…お父さんが野球好きだったみたいだから」
望「それで供えてあるのね」
桂「そうだよ。今日はベースボール記念日なんだって」
望「べいすぼうる?」
桂「野球も父の日と一緒で、アメリカから日本に伝わったの。英語ではベースボールっていうんだよ」
望「あめりか…鬼が棲む異国だったかしら?」
桂「あはは…鬼じゃないと思うけど…」
桂(そういえば…昔の人は、日本人と容姿が違って言葉も通じない外国人を鬼だと思ったりもしたみたい)
望「それにしても、九人対九人って多すぎない? 毬は一つしか無いんでしょ?」
桂「まあ、基本は投手と打者の一対一の勝負だからね。ほかの野手は打球が飛ばないと出番がないし」
望「二人でもできるの?…なら、ちょっとやってみせてよ。私が相手になってあげるわ」
桂「でもバットかグラブがないと…蔵にあったかな?」
望「抜刀神楽舞?」
桂「バットっていうのは、これくらいの長さの木の棒。球を投げたら、それで打ち返すんだよ」
望「へえ。木の棒を探せばいいのね」
【羽藤邸の蔵】
望「あったわよ。桂」
桂「それは擂り粉木だよ。長さが全然足りないよ」
望「あら、そう」
桂「んー。あるとしたらお父さんが使ってた物か…それとも」
望「桂。これでしょう?」
桂「それは麺棒。おそばやうどんを拵える道具だよ」
望「なんだ…これも違うのね」
桂「ノゾミちゃん…もしかしてお腹すいた?」
望「まあね。屋敷に着いたのだから、早く御馳走を頂戴な」 桂「しょうがないな…やさしく吸ってね?」
望「わかってるわ。私には柚明と違って人の傷を消すような力は無いんだから…」
桂(傷は後でユメイお姉ちゃんが治してくれるけど…ノゾミちゃんに血を吸われた痕を見せるのはちょっと恥ずかしいな///)
桂「ちょ、ちょっと待ってノゾミちゃん。こんなところで…」
望「だって、ここは桂と私の始まりの場所よ」
桂「あ…そっか」
桂(長い間、忘れていたけど…苦い思い出であると同時に、私にとって一番大切なひとと出会った場所でもあるんだ)
桂「…ちょっと埃っぽいけど」
望「構わないわ。ここなら邪魔が入る心配もないし」
桂「じゃあ…」 桂(ノゾミちゃんと出会った去年の夏から、一緒に暮らしてて…何度も繰り返してきたけど)
桂「い…っ」
望「ん…まだ慣れない?」
桂「慣れても、やっぱり噛まれるのは痛いよ…」
望「ごめんね。…ふふ、すぐに気持ち良くしてあげる」
桂(な、なんかエッチだなぁ…いつものことだけど)
望「ん…くっ」
桂(おいしそうに飲んでる…)
望「ふぅ…」
桂(吸われてる間、私はノゾミちゃんの頭をなでてみたり、ぎゅっとしがみついたり…)
望「…桂」グイ
桂「…ん」
桂(私の血で濡れたままの唇で、キスされて…)
桂「…どうしたの?」
望「恋人同士は、こうやって口づけを交わすのでしょう?」
桂「ノゾミちゃん…そうだね///」
桂(私の血の味がするキスだけど…それは触れるだけじゃない、二人が混ざり合った証)
桂「…って、そんなことしてる間に日が暮れちゃったよ」
望「真っ暗ね。ヤキュウは明日にしましょ(…闇夜でも私は平気だけど)」
桂「私もゴハン食べなくちゃ…お腹ぺこぺこ」
望「人間は面倒くさいわね」
桂「ノゾミちゃんのためでもあるんだからね?」
望「そうね。いい物食べて、私のために美味しい血を蓄えるのよ」
桂(ちょっと大変だけど…わたしは幸せです♪) 望「雨、止んだわね。…あら? 桂?」
望「桂!夜は勝手に外に出ないでって言ったでしょ!」
桂「あ…ゴメン。ノゾミちゃん」
望「何してるのよ。夜なのに草むしり?」
桂「ペパーミントの収穫。さっきは雨降ってて、できなかったから…」
望「ぺ…ぱ…何ですって?」
桂「薄荷みたいな物だよ」
望「薬草摘みなんか明日でいいじゃないの」
桂「もう終わったよ。それに今日はペパーミントの日だし…」
望「いいから戻るわよ」グイ
桂「わわっ、すぐ行くから引っ張らないで〜」
【台所】
桂「ペパーミントは鎮痛や抗菌作用、眠気覚ましに鼻づまりの解消、気持ちを落ち着かせたり胃がスッキリしたり、乗り物酔いの予防にもなるんだよ〜」
望「そんなもの…薬草なんかに頼らなくたって私がちょちょいっと暗示をかければ、だいたい全部できるわよ」
桂「そうなの?…まあ、ノゾミちゃんのおまじないなら私には特に効きそうな気がするけど…」
望「効くわよ。私を誰だと思ってるの」
桂「ノゾミちゃん」
望「桂は暗示にかかりやすいんだから、変な奴が来たら厄介でしょ。夜は気をつけてよね」
桂「でもノゾミちゃんのお守りあるし、携帯持ってれば大丈夫でしょ?」
望「…ま、何が来たって私の桂には指一本触れさせないけどね」
桂「うん。…えへへ。頼りにしてます♪」ギュ
望「まったく…相変わらず危機感ないんだから」
桂「じゃーん!羽藤家特製ハーブティー!」
望「さっきの薄荷を使ったの?」
桂「そうだよ。あとお風呂に入れたりするのもいいんだって」
望「薬湯か。…まあ、飲んで美味しい物じゃなさそうだけど」
桂「うーん…確かに私も普通の日本茶のほうが好きだけどね」
望「私は飲むなら桂のがいいわ♪」
桂「…血?」
望「もちろん」 桂「昨日もあげたよね?」
望「毎日でも欲しいわよ」
桂「えーと…そ、それよりお風呂入らない?早速ペパーミントを入れてみようかなって」
望「私は現身がないから入らなくても平気よ」
桂「それはそうなんだけど…」
望「なあに、一緒に入って欲しいの?」
桂「…うん///」
望「そ。…お風呂であたたまって血行がよくなってからいただくのもいいかしらね」
桂「わ。やっぱり吸う気満々なんだ…いいけどね」
トプン ザバー
桂「実体がなくてもお湯の熱さって感じるの?」
望「ええ。桂の血をいつも飲んでるおかげで、限りなく現身に近い状態を維持してるから。感覚とかもちゃんとあるわよ…こうやっていつでも桂に触れられるし」
桂「ひゃ」
望「…でなきゃ、桂の血も吸えないじゃない?」
桂「それもそうだね…」
望「でも、いつの間に薬草なんて育ててたの?」
桂「…ほら、うちの庭って草が伸び放題でしょ?」
望「そうね」
桂「ペパーミントって繁殖力が強くて、ほかの植物を枯らしちゃうほどっていわれてるの」 望「桂…まさかと思うけど」
桂「だって、私たちだけじゃ手に負えない状態だし…周りの草とか枯らしてくれたらいいかなって」
望「薬草の世話する手間をかけるんだったら、そのぶん草刈りでもしたらいいんじゃない?」
桂「ハーブは収穫した後の楽しみもあるけど、ただの草を刈っても食べたり飲んだりできないんだもん…」
望「私もそろそろお風呂の後の楽しみが欲しいわね」
桂「もう。出るまで待ってて」
望(…去年の今頃は想像もつかなかったわね。贄の血筋の娘と、こんなふうに暮らしているなんて)
望(ただ贄の血欲しさに襲っただけ…なのに、こんな“収穫”があるなんて)
桂「ふぅー。幸せ〜♪」
望「本当ね…桂」ギュ
桂「え、なに?」
望「好きよ…桂」チュ
桂「ん…私も///…ノゾミちゃん、血はいいの?」
望「後でいただくわ。…今はこうしていたい気分なの」
桂「そっか。…えへへ。大好きだよ、ノゾミちゃん♪」ギュー 桂「ん…あれ、ノゾミちゃん?」
望「桂。…起こしちゃった?」
桂「ううん。自然に目が覚めたっていうか…ノゾミちゃんはずっと起きてたの?」
望「そうじゃないけど…ゆうべは満月だったでしょ」
桂(あ…“望月”。ノゾミちゃんの名前と同じ)
望「あっという間に沈んでしまうわね」
桂「そういえば、今日は夏至…昼が一番長い日なんだよね」
望「ええ…そうね」
桂「やっぱり昼は苦手だったりするの?」
望「今の私は主や良月じゃなく、桂の力をもらっているから平気よ。夜のほうが好きではあるけどね」
桂「そっか。…よかった」
望「桂と一緒に暮らしているのに、いつまでも夜行性じゃ困るものね」
桂「んー。まあ昼間は学校だし、二人きりでゆっくりできるのはやっぱり夜かなぁ…」
望「どうして昼間なのかしら…ガッコウなのに」
桂「え?…あ、“月光”?」
望「そ」
桂「お月さまって好きだな。前から好きだったけど、もっと好きになったよ。ノゾミちゃんもいるし」
望「そう言ってくれるのは嬉しいけど…桂はいつ私を好きになったの?」
桂「えっ…いつだっけ」
望「十年ぶりに再会して…私は贄の血を求めて桂を襲っただけで、全く良い印象は無かったでしょう?」
桂「…確かに、最初はちょっと怖かったなぁ」
望「ええ。怖がっていたわね」
桂「でも…ノゾミちゃんは私のこと好きだって言ってくれたから。…主にも渡さないって」
望「まあね」
桂「あのときは、まだ主を恩人だと思って信じてたんだよね?」
望「そうね。騙されていることに…ミカゲの正体には気づいていなかったわ」
桂「それでも、私を主には渡さないって言ってくれたんだ…贄の血を独り占めしたいから?」
望「それもあるけど…血だけじゃないわよ」
桂「…本当に?」 望「桂は十年前は子供だったけど、すっかり成長して…きれいになったし。一方で声や肌や、中身の柔らかい感じは変わってなくて…とにかく全部が魅力的だったのよ」
桂「やわらかい?…それってほめてるの?」
望「ほめてるわ」ムギュ
桂「ひゃめへよ〜」
望「うふふふ…本当に柔らかい」
桂「もう!…私は、好きだって…誰にも渡さないって言ってくれて…血を吸われてノゾミちゃんの中に入って…それから、やっぱり私を守ってくれたときかな」
望「主の分霊ごときにやられっぱなしで、あんまり恰好よくはなかったけどね」
桂「そんなことないよ。あのときのノゾミちゃん、すっごく素敵だった。自分が消えちゃうかもしれないのに、私のために…たったひとりで戦ってくれて」
望「負けたくなかったのよ。…勝ち目がなくても、桂だけは渡さないって決めたから」
桂「でもノゾミちゃんが消えちゃうって思ったら、すごく怖くて…やっと気づいたの。大切なひとなんだって」
望「血を吸って、吸われてるうちに…お互いひかれ合ったってこと?」
桂「そうかもね。…ふふふ」
望「…でも、桂が私を選んでくれるとは思わなかったわ」
桂「どうして?」
望「桂って惚れっぽい感じがするもの。柚明とかサクヤとか…私の天敵の鬼切りの女にさえ、ときめいていたんじゃなくって?」
桂「そ、それは…ちょっと素敵だなって思ったりはしたけど」
望「…ほらね」
桂「でも恋愛とかじゃないもん…私の初恋の人はノゾミちゃんだよ」
望「本当かしら…」
桂「ホントだよ。いつでも、誰よりもそばに居たいし、居てくれるのはノゾミちゃんだもん」
望「そうね。この定位置は誰にも譲らないわ」
桂「うん♪」 桂「ノゾミちゃん。今夜のお月さまも綺麗だね♪」
望「そーね。望月ではないけれど、言われなければ見分けがつかないくらい、僅かに欠けているだけだし…」
桂「もちづき…あれ? 何か忘れてるような…」
望「…ところで、何だか焦げ臭くない?」
桂「あぁー!?お餅焼いてるの忘れてた!」
チーン
桂(よかった…ちょっと焦げ目がついただけで、なんとか無事だった)
望「正月でもないのに、どうして餅なんか焼いてるのよ?」
桂「あれ、ノゾミちゃん知らない? 関東では夏至に焼き餅を食べる風習があるんだよ」
望「ふーん…それも異国から伝わったの?」
桂「んー、どうなんだろ? お餅だし、日本っぽい感じはするけど」
望「まあいいけど。桂って、すべすべして柔らかくて、お餅みたいに美味しそうね」
桂「わたし、こんなにのびたり膨らんだりしないもん…」
望「でも私にとっては、餅よりずっと美味しいわよ。桂は…フフフ」
桂「わたしの血が、でしょ?…もう」
望「食べて栄養つけたら、私に頂戴な」
桂「はいはい…焼き餅といえば、今日は生きた心地がしなかったよ…」
望「別に私は妬いたりした覚えはないわよ」
桂「私が陽子ちゃんといる間くらい、おとなしくしててくれてもいいのに…」
望「だって、二人だけで面白そうなことしてるんですもの。私は連れて行ってもらったことないのに」
桂「ケータイ持ってるんだから、私が行けばノゾミちゃんもいるでしょ」
望「でも桂は陽子って子と約束して逢い引きしたのでしょう?…あちらは私のことは知らないんだから」
桂「逢い引きじゃないよ。最初から二人きりで行く予定じゃなくて、お凛ちゃんも誘ったけど来なかったの」
望「たくさん訊きたいこともあったのに、桂ったら私のこと無視して…」
桂「しょうがないよ…人前でずっとノゾミちゃんと話してるわけにはいかないもん」 望「そういえば桂、あのお店でも何か食べていたわよね。…あの赤いのって、もしかして…」
桂「血じゃないよ。あれはトマトケチャップ」
望「とま…とけ…茶?」
桂「トマトっていう赤い野菜を煮詰めて作った物だよ。オムライスにはケチャップがつきもの♪」
望「ふーん…それ、美味しいの?」
桂「ケチャップだけだと味が濃すぎるけど、お料理にかけて食べるとおいしいよ」
望「贄の血より美味しい?」
桂「や、それはどうかなぁ…ノゾミちゃんにとっては、血に勝る物は無さそうな気もするし」
望「そうね…贄の血に勝るものがあるとすれば…」
桂(ノゾミちゃんはしばらく考えた後…)
望「そうだわ。桂、何か作ってよ」
桂「えっ。作るって…お料理?」
望「そうよ。料理には愛情をこめるものなのでしょう?」
桂(どこでそんなこと覚えたんだか…)
望「桂の愛情なら、私がいただくべきだと思うわ」
桂「でもノゾミちゃんは実体がないけど…食べられるの?」
望「ええ。血を飲むことができるんですもの。食べ物だって食べられるわ」
桂「なるほど。…じゃあ、何か食べたい物ってある?」
望「何でもいいわよ。桂の愛情がこもっていれば…」
桂「じゃあ…このお餅食べる?」
望「それって、買ってきて焼いただけじゃない」
桂「そうだけど…(ノゾミちゃんが食べる事を想定してなかったから、特に愛情をこめた覚えもないなぁ)」
望「ほかに何か作れないの?」
桂「わたし、お料理はあんまり得意じゃないし…ノゾミちゃんは?」
望「何の話?」
桂「だから、お料理。ノゾミちゃんはできるの?」
望「料理なんて…藤原の娘がすることじゃなくってよ」
桂「…だろうね」
桂(お互いへの愛情だけなら誰にも負けない自信があるけど、肝心の愛情をこめるお料理のほうが、残念ながら二人とも得意じゃなかった…) 望「そうだわ。あれ作ってよ。桂」
桂「あれって?」
望「お店で食べてたあれよ。赤いのをかけて…」
桂「ああ、オムライス?」
望「おむら…いす?」
桂「わたし、作ったことないよ…ちょっと自信ないなぁ」
望「でもあれ、暗示をかけたら美味しくなるのでしょう? 暗示は私がかけてあげるわよ」
メイドさん『おいしくなーれ♪ はい、ちゅんちゅん(^8^)』
桂「…あれはもともと美味しくできてる物だから、おまじないは気休めにしかならないと思うよ…」
望「そうなの?」
桂「うん。料理自体が美味しくなかったらダメだと思う…」
望「仕方ないわね。じゃあ、美味しく作れるように練習しておいて。次の満月まで猶予をあげるわ」
桂「練習かぁ…頑張ってみようかな?」
望「約束よ。桂の手料理、楽しみにしてるから♪」
桂「うぅ…あんまりプレッシャーかけないで…」
望「ぷれ…何?」
桂「過度の期待はしないでってこと」
望「そうね。不出来な物でも桂と二人で分け合って食べれば、苦しみも半分で済むわね」
桂「そこまで!?…苦しむほどひどい出来なら食べさせないよ…」
望「ふふふ…そうならないことを祈るわ」
桂「もう、他人事だと思って…わたしだってノゾミちゃんの手料理を食べてみたいんだけどなー」チラ
望「この私に料理をしろっていうの?」
桂「だめ?」
望「不可能ではないけれど、本当に全く作ったことがないのよ。それこそ出来は保証しないわ」
桂「じゃあ、二人で一緒に練習しようよ。料理上手なサクヤさんに教わるとか…」
望「あの観月の娘に教えを乞うですって?…冗談でしょう?」
桂「だって、お母さんはもういないし…サクヤさんが適任だと思うけど」
望「桂はともかく、あの女が私にまともに教えてくれるかしら?」
桂「大丈夫…だと思うけど…多分」
桂(サクヤさんとノゾミちゃんは、仲は悪かったけど…わたしのお願いなら、きっとサクヤさんも聞いてくれるよね?) サクヤ「…で、二人して私に料理を教わろうってのかい?」
桂「えへへ…お願いします」
サクヤ「あんたが料理ねぇ…」
望「別に、嫌なら私には教えていただかなくても結構よ。私は桂の手料理が食べられればそれでいいの」
桂「えー。そんなこと言わないで、せっかくだからノゾミちゃんも一緒に教えてもらおうよ〜」
望「ふん…」
サクヤ「…まったく、相変わらず可愛げのない…とはいえ、桂のお守り役のあんただけ追い返すわけにはいかないからねぇ。どうせ居るんだ、そこで見てな」
桂(そもそもノゾミちゃんの依り代は文字通り私の“お守り”だから、私が携帯を持ってるかぎりノゾミちゃんは私から離れられないんだよね)
サクヤ「そうだねぇ…今日はコレを使うとしようか」
桂「缶詰?」
サクヤ「今日は“カニの日”らしいからね。こいつを使った料理を作るよ」
望「可児って、美濃の?」
桂「じゃなくて、海とかにいる生き物のカニさんだよ」
望「ああ、それなら経観塚の渓流にも居るわよ」
サクヤ「沢蟹とはまた種類が違うんだけどね。海にいるのはもっと大きいやつさ」
望「そんな鉄の筒の中に蟹が居るの?」
桂「この缶の中に入ってるカニさんは、殻がなくて中身だけになっちゃってるけどね」
サクヤ「缶詰とはいえ、ちゃんとしたカニだからね。カマボコなんかで作るのより上等なもんだよ」
桂(ちゃんとした缶切りで開ける缶詰なんて、何年ぶりに見たかなぁ…)
望「かまぼこ?」
桂「えっとね、お魚のすり身を使って、カニの身に似せて作るカマボコがあるの。経観塚のお店でも売ってるよ」
望「魚を蟹に似せる?…なぜそんなことをするのかしら?」
桂「えーと…なんでだろう?」
サクヤ「事情はいろいろさ。海でも魚は簡単に釣れるが、大きな蟹を捕まえるのは海女でもなけりゃ難しいからねぇ」
望「…なるほどね」
桂(ノゾミちゃん、今の説明で納得したのかなぁ…) 桂(手際よく二種類の料理を作るサクヤさん)
サクヤ「オムライスとはちょっと違うけど、これも卵とごはんを使った料理には違いないだろ?」
桂「おいしそうな匂い…おなかすいたー」
望「そうね」
サクヤ「匂いだけじゃないよ。…ほら、冷めないうちに食べた食べた」
桂(カニ炒飯と天津飯だ。中華料理のお店みたい!)
サクヤ「…っと、あんたは食べられるんだっけ?」
望「ええ。血を飲めるくらいだから、食べ物も食べられるわよ」
サクヤ「へえ…ってことは、あの娘も…?」
桂(サクヤさんの考えてることも、何となくわかる気がする…たぶん、ユメイお姉ちゃんのこと…)
望・桂・サクヤ「いただきます」
桂「おいしい♪」
望「何とも珍妙な味ね…悪くはないけれど」
サクヤ「舶来の料理を日本流にアレンジ…応用した物さ」
桂「そういえば、天津には天津飯ってないんだっけ」
サクヤ「そうそう。ナポリタンが日本料理なのと一緒だね」
望「なぽ…何ですって?」
桂「ナポリタン。トマトケチャップを使う料理だよ」
望「ああ、あの赤いの…オムラなんとかだけではないのね」
サクヤ「食べ終わったら、次はオムライスだよ」
桂「え?…いま食べたばかりで、まだ作るの?」
サクヤ「腹が減っては何とやらってね。ノゾミはオムライスが食べたいんだろ?」
望「ええ」
サクヤ「じゃあ、ここからが本番さね。今度はただ作ってみせるだけじゃなくて、一つ一つ丁寧に教えるからね」
桂「お、お手やわらかにお願いします…」
トントントン…
サクヤ「…と、こんな感じで刻むんだけど。使う具材は何でもいいからね」
望「なんでも?」
サクヤ「ケチャップの味に馴染む物ならね。結局ほとんどケチャップの味になるからさ」
桂「な、なるほど」 桂「…も、もう食べられません…」
サクヤ「それ、漫画か何かの寝言かい?」
望「料理って、案外楽しいものね」
桂「おおっ…ノゾミちゃんがお料理に目覚めた!?」
望「こんな小さな卵が、様々に形を変えて…それもただのまやかしじゃなくて、食べてみても違う物に感じるわ」
サクヤ「そうだねぇ。鬼やら神やら、特別な力がないただの人間でもできる不思議な術かもしれないね」
望「桂でもできるのね」
桂「どうせ私は何の力もないですよーだ…」
望「拗ねないの。桂には私がついてるじゃない」
サクヤ「桂の特別な“血”が欲しくて、かい?」
望「それもあるわ。…あなたにはあげない、私だけの特別な御馳走」
桂「ノゾミちゃん…」
サクヤ「やれやれ…贄の血を求めてさまよい出た鬼に、桂がぞっこんだなんてねぇ」
望「うふふふ…羨ましい?」
桂「や、やめてよぉ」
サクヤ「桂のこと、頼んだよ。しっかり守らなきゃ承知しないからね」
望「あなたに言われるまでもないわ。この私の存在をかけて…何があっても桂は守ってみせる」
桂「ノゾミちゃん…ありがと///」
サクヤ「はいはい、御馳走様。暑くてかなわないから、ここらで退散させてもらうよ」
桂(手でぱたぱたと扇ぐふりをしながら、サクヤさんは帰っていった)
望「桂。今度、ナポなんとかっていうの作って頂戴な」
桂「え、ナポリタン?…オムライスじゃなくて?」
望「オムライスはもう食べたから、次はナポ…そっちも食べてみたいわ」
桂(作り方教わってないんだけど…まあ、オムライスよりは簡単かな?)
桂「っていうか、私は和食派なんだけど…」
望「日本料理だって言ってたじゃない」
桂「それはそうなんだけど、なんか違うのーっ」
桂(ノゾミちゃんがトマトケチャップを気に入ったみたいで、私としては複雑だったりする…) 桂「あ、そういえば…今日はボウリングの日なんだって」
望「ぼう…りんぐ? 三隣亡みたいなもの?」
桂「全然違うよ…ボウリングっていうのはね、すいかみたいに大きくて重い球を、ごろごろって転がして…」
桂「こういう、徳利みたいな形のピンが並んでるんだけど、それを倒して数を競う遊びなの」
望「ふーん…それって面白いの?」
桂「私は、あんまりやらないけど…結構楽しいと思うよ」
望「ヤキュウより簡単なの?」
桂「そうだね。何も道具を持ってなくてもボウリング場へ行けばできるし、人数も少なくて済むよ」
望「私と桂だけでもできる?」
桂「えーと…いや、ボウリング場だといろいろ問題があるかも…」
望「いろいろって何よ」
桂「周りの人はノゾミちゃんが見えないから、誰もいないのに球が転がってたらびっくりしちゃうと思うし…」
望「もう、結局それなの?…昨日行ったアキハバラの町でも私は全然遊べなかったし。…つまらないわ」
桂「あはは…ごめんね。私だって本当はノゾミちゃんといろんなことして遊びたいんだけど…」
望「まあ、仕方ないかしらね…私が鬼にならなかったら、そもそも桂には出会えなかったわけだし」
桂「うん…ノゾミちゃんに会えないのは嫌だよ」
望「ちゃんといるわよ。だからそんな顔しないの」チュ
桂「わ…ノゾミちゃん///」
望「ふふふっ。あなたって本当に面白い顔するわよね」
桂「面白いって…そんなに変な顔してる?」
望「別に変じゃないわよ。桂の顔は私が一番好きな顔だもの」
桂「…顔だけ?」
望「全部よ。桂の顔も体も、血も…桂のすべてが愛しいの」
桂「えへへ///…私も、ノゾミちゃんの全部が好きだよ♪」
望「本当かしら?」
桂「ほんとだよ〜」
望「ふふ…ありがと。さ、もう寝なさいな。疲れた体で血を吸われるのはつらいでしょうから」
桂「あ…今、欲しい?」
望「明日でいいわ。おやすみ。桂」
桂「うん…おやすみなさい」 望「…土砂降りね。桂…桂?」
桂「んぅ…お母…さん」
望「何言ってるの。私はノゾミ──」
桂「…」スー
望(…寝てる)
望「ふふっ」ナデナデ
桂「…」スヤスヤ
望「…しょうがないわね」
ザァァァ…
桂(あれ…この匂い…)
桂「…お母さーん?」
望「あら、やっと起きたの。おはよう桂」
桂(あ…そっか。お母さんは…もう)
望「…桂?…寝ぼけているの?」
桂「お、おはようノゾミちゃん…何してるの?」
望「何って…見ればわかるでしょ」
桂「…なにこれ」
望「た、卵を焼いたのよ」
桂(…確かに溶き卵をフライパンに流し込んで焼いた物なのはわかるけど) 桂「ノゾミちゃん…油をひかなかったでしょ? くっついちゃってるよ」
望「ちょっと忘れていただけよ。でも焦がしはしなかったわ」
桂「味付けは?」
望「ええと…こ、これからよ。…そうだ、あの赤いのかけて食べましょうよ」
桂(オムレツでもなく、玉子焼きと呼べる物でもなく…本当にただ卵を焼いた物としか言い様がない)
桂「…ふふっ」
望「な、なによ。…嫌ならいいわよ。私ひとりで」
桂「…ありがと」ギュ
望「えっ。…ちょっと、急にどうしたのよ…桂?」
桂(よかった…わたしにはノゾミちゃんが居てくれて)
桂「うん…意外といける」
望「当然よ。私を誰だと思っているの」
桂(…見た目はボロボロだけど)
桂「ごちそうさまでした♪」
望「桂。傘ってこれでいいのよね?」
桂「…ぅー。わたし、雨って苦手…」
桂(いろいろ嫌なことも思い出すし…あ)
望「私がついてるわ」ギュ
桂「うん…ありがと。ノゾミちゃん…行こっか」
望「ええ」
桂(ノゾミちゃんがいるから…今は、雨の日でも…ちょっとだけ楽しい♪) 望「案外あっさり止んでしまったわね」
桂「そうだね。ちょっと蒸し暑かったかな」
望「でも桂、あの傘お気に入りなのでしょう?」
桂「うん。お母さんが買ってくれた傘だから…」
桂(一年前までお母さんと二人で暮らしてたから、今でも使ってる思い出の品物もたくさんある…ノゾミちゃんの依代になってる青珠の御守りもその一つ)
桂「そういえば…和傘で蛇の目傘ってあるよね」
望「そうね」
桂「輪っかの模様が由来っていうのはわかるんだけど…単純な形なのに、誰が蛇の目なんて名付けたのかな?」
望「さあね…私が人として生活していた頃には、雨傘なんて無かったし」
桂「そうなの?」
望「ええ。あれは随分新しい物よ。精々六百年くらいの歴史しかないんじゃないかしら?」
桂「そうなんだ…じゃあ、室町時代くらいかな」
桂(それでも私にとっては想像つかないほど大昔だけどね…)
望「…ま、かりに雨傘があったところで、滅多に外へ出られなかった私には関係ないけれど」
桂「ノゾミちゃん…」
望「そんな顔するんじゃないの。あなたは私を二度も自由にしてくれたんだから」
桂「最初のはあんまり思い出したくないけどね…」
桂(…十年前、屋敷の蔵にあった鏡…“良月”の封印を解いてしまった。そのせいでノゾミちゃんとミカゲちゃんが解き放たれて…)
望「それより、せっかく雨が止んだのに今日もヤキュウはできなかったわね」
桂「結構よく降ったから、地面も濡れてるし…乾いてからのほうがいいよ」
望「私は平気だけど、桂が泥まみれになってしまうものね。そうしたらせっかくの贄の血も泥臭くなりそうだし」
桂「それはお風呂に入れば大丈夫だと思うけど…」
望「ふふふっ。…じゃあ、そろそろお風呂にしましょうか」
桂「お風呂の後は…やっぱりあれ?」
望「桂さえよければ遠慮なくいただくわ」
桂(ノゾミちゃんに血を飲んでもらうのも、あまり抵抗なくなったなぁ…) 桂「野球で思い出したけど、今日はオリンピックデーなんだって」
望「おりん?…ああ、桂の友人の東郷某って娘?」
桂「お凛ちゃんじゃなくて、オリンピック。五輪…って言ってもわかんないか」
望「東郷某のほかにも、お凛って人がいるの?」
桂「違うよぉ…えっとね、野球とか、ほかにもいろんな競技がある、四年に一度の祭典なの。それがオリンピック」
望「ヤキュウとか、ボウリング?」
桂「ボウリングは無かったような…いや、野球もまだないんだけど」
望「どういうこと?」
桂「えーと、いろいろなスポーツ…走ったり泳いだり、そういうのを競う祭典なの。日本では四年後に東京でやる予定なんだけど、そのときは野球もあるんだって」
望「ふーん…じゃあ、ヤキュウは今まで仲間外れだったけど、新しく仲間に入れてもらえるってわけ」
桂「まあそんなとこ…かな。昔は野球も入ってて、四年前から外されたんだけどね」
望「出たり入ったり、ややこしいのね」
桂「なんだか外国人の偉い人たちが決めてるみたいで…その人たちの国で人気がない競技は外されちゃったりするの」
望「で、今日はヤキュウはしないけど、どこかでその…おりんなんとかをしてるの?」
桂「そうじゃないんだけど…オリンピックが今の形式になった記念日みたいなもの…だと思う。実際にオリンピックが始まるのは、もう少し先だよ」
望「少しって…どれくらい先よ?」
桂「夏休み…私が去年、経観塚に来た頃くらいかな」
望「これから一層暑くなるのに、わざわざ炎天下を走ったりするの?」
桂「四年後はそうなるけど…今年のオリンピックは外国だから日本とは気候が違って、たぶん暑くはないんじゃないかな」
望「暑くない異国か…行ってみたいわね」
桂「そうだね…暑くないのはいいよね。グリーンランドとか、南極とか」
望「行きましょうよ。桂が行くなら私はどこへでもついて行くわ」
桂「簡単には行けないよ…お金や時間がないと無理!」 望「ところで、さっき五輪がどうとか言ってたわよね?…桂も鬼切りの千羽党の術とか使えるわけ?」
桂「えぇ!?わたしは無理だよ…お母さん、私にはそういうの教えてくれなかったもん」
望「ふーん…私も正直よくわからないけど、確か五輪って地・水・火・風と…あと何だったかしら?」
桂「え? オリンピックの五輪ってそういう意味なの?」
望「私は知らないわよ。ほかに五輪の意味なんてあるの?」
桂「えーと…何だったっけ?…聞いたことあった気がするけど、覚えてないや…」
望「千羽の鬼切りなら知ってるんじゃない?」
桂「そっか。…よし、烏月さんに訊いてみよう!」
『…五輪?』
望「そ。地・水・火・風はわかるんだけど、あと一つって何だったかしら?」
『“空”だね』
桂「食う・寝る・遊ぶ?」
『…いや、ソラと書いて空(くう)のほうだ』
桂(しょーもないボケに真面目に返されてしまった…)シクシク
『用事はそれだけかい?』
桂「ご、ごめんなさい…烏月さんもお忙しいのに」
『いや、構わないよ。何事も無いに越したことはない…君も身を護る術を学びたいなら、機会を見て私が教えようか』
望「そーよ。かりにも最強の鬼切りの娘なんだから、桂も少しはそういうの覚えなさいな」
桂「わ、わたしに鬼切りの術なんて…」
『何も鬼切りに限らなくても、君に向いている術があれば、そういうものから試してみればいい』
望「私がいるんだから、私が使えない術を桂が身につけてくれれば言うことないわね」
『では…桂さんのこと、頼んだよ』
望「ふふん、任せなさいって。言われなくても、いつだって桂は私が守るわ」ギュ
桂「あ、ありがとうございました。おやすみなさい、烏月さん」
『ああ。お休み』
望「桂ったら、なに照れてるのよ」
桂「だって、ノゾミちゃんが…///」
望「電話なんだから、烏月には私たちは見えてないわよ」
桂「それはそうだけど…」 望「あら、雲に隠れちゃったわね」
桂「うん…でも、これはこれで綺麗だよね」
望「そうね。薄く雲が掛かった向こうに淡い光が見えて…っと、完全に隠れたわ」
桂「また雨が降るのかな?」
望「どうかしら…神のみぞ知る、といったところね」
桂「そういえば…今日はUFO記念日なんだって」
望「ああ、私たちの主題歌を唄っている人?」
桂「それはeufoniusのriyaさんでしょ。…っていうか、知ってるんだ?」
望「私だってそれくらいはね。…あ、ほら。また月明かりが見えてきたわよ」
桂「きれいだねー。…じゃなくてUFOだってば」
望「あの若杉なんとかいう子が食べたがっていた物ね」
桂「カップめん?…いや、そのUFOじゃなくてね…そんなのも知ってるの?」
望「まあね。料理が苦手な偏食家の桂と一年近くも暮らしていればね」
桂「そういえば買い置きがあったような…いけない、夜中なのに食べたくなりそうだよ〜」
望「我慢しなさい。月でも見て空腹なんか忘れるのよ」
桂「すっかり雲が消えて、きれいにお月さまが見えるね」
望「この短い時間でめまぐるしく空模様が変わったわね。…桂の表情も見ていて飽きないけれど」
桂「え、わたしってお月さまみたいにキレイ?」
望「はいはい。桂は綺麗よ」ナデナデ
桂「心がこもってないー」プクー
望「本当にそう思っているわよ。だからあなたを気に入ったんだもの」チュ
桂「えへへ。ありがと///」
望「…で、ユウホウなんとかって何の話?」
桂「あ、うん。UFOっていうのは未確認飛行物体…夜空を飛び回る謎の光だとかそんなの」
望「蛍とか、花火?」
桂「そういう何だかわかる物じゃなくて、何なのかわからない物がUFOだよ」
望「ふーん…わからないものに仮の名前をつけただけなのね」
桂「ん。そんなとこ」
望「夜空には月や星があれば充分だわ。わざわざほかの何かを探さなくても…」
桂「あはは…それもそうだね」 望「わたしは和食派!」
桂「ぎくっ」
望「…とか言ってなかったかしら?」
桂「そ、そうだけど…」
望「…で、これは何?」
桂「…カレー」
望「まあ、便利。袋ごと鍋に入れて熱湯であたためるだけで、舶来の料理を味わえるなんて」
桂「うぅ…だって遅くなっちゃったし、食材も時間もなかったし…」
望「その遅くなった逢い引きの相手が私だったら納得するけれど…桂ったら、東郷なんとかいう娘と日が暮れるまで戯れていたのよね?」
桂「だって、この間はお凛ちゃんだけ一緒に行けなかったでしょ。だから今日はお凛ちゃんが行きたいところへ一緒に行ったの」
望「あんな城なんか見て何が楽しいんだか…あの娘の家だって城みたいなものでしょうに」
桂「別に、ただ大きいお屋敷が好きなんじゃなくて、歴史ある建物だからいいの」
望「そのうち羽様の羽藤家の屋敷にも連れて行けとか言い出しそうね」
桂「うちは別に歴史の舞台とかじゃないから…地元はともかく全国的には全然知られてないもん」
望「赤い…けど、なんだか変な匂いね」
桂「すごく辛そう…あ、つらいじゃなくて“からい”だよ」
望「なに言ってるの?」
桂「こっちの話…えへへ。いただきます」
望「…どうなの?」
桂「ものすごく辛い!」
望「山椒や山葵くらい?」
桂「そういうのじゃなくて、もっと凶悪な辛さっていうか…」
望「私にもひと口頂戴な」
桂「いいけど…気をつけてね? お水、ここにあるから」
望「…うぐっ!?」
桂「わ。…だ、大丈夫!?」
(3分後)
望「…人の食べる物ではないわね」
桂「ノゾミちゃんは鬼だけど…」
望「鬼も食べないわよ。こんな物…」 桂「あはは…私にも、ちょっと辛すぎたかなぁ。サクヤさんが置いてったんだけど」
望「まともな料理を作れるのに、どうしてこんな物を…」
桂「自分では作らない物を食べてみたかった…とか?」
望「まったく…蛮勇は身を滅ぼすものね」
桂「羽様のお屋敷といえば、今日は住宅デーなんだって」
望「なによ、それは」
桂「スペインの、なんとかいう建築家の誕生日…だったかな」
望「すぺ…何ですって?」
桂「えっと…西班牙(イスパニア)?…っていう国。メジャーリーガーや日本のプロ野球の外国人選手にも、スペイン語を話す人がたくさんいるよ」
望「ヤキュウの国なの?」
桂「んー。スペイン自体は野球はあんまり有名じゃないかなぁ。どっちかっていうとサッカーのイメージだよね」
望「作家の虐め?」
桂「サッカー。蹴鞠みたいなスポーツなの」
望「ああ、あれね。そのへんの子供が時々やっているわよね」
桂(ノゾミちゃんも見た目は子供みたいな感じだけど…)
望「…なに?」
桂「な、なんでもないよ。…っていうか、住宅デーの話だったよね」
望「西班牙だかの建築家と、羽藤家の屋敷にどんな関わりがあるのかしら?」
桂「それは別にないと思うけど…確か、大工さんとか建築にかかわる人たちの記念日だったと思うよ」
望「ふーん…正直あまり興味はわかないけれど」
桂「わたしはそれより、夢の中でノゾミちゃんが住んでたお屋敷にお邪魔したときのことを思い出したよ」
望「ああ…そんなこともあったわね」
桂「あの場所で約束して…ノゾミちゃんと“賭け”をしたんだよね」
望「…私は存在すら危うくなる大敗を喫したけどね」
桂「ごめんね…でもあれがあったから、こうして一緒にいられるんだし」
望「まあね。桂のおかげで“主”の呪縛から自由になれて…よかったわ」
桂「あのお屋敷のことは…やっぱり、あんまり思い出したくないかな?」
望「別に…もう遠い昔のことよ」 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 桂「昔といえば…ハーメルンの笛吹きって知ってる?」
望「蹴鞠が盛んな熱帯の国だったかしら?」
桂「カメルーンじゃなくて…っていうか、どこでカメルーンなんて覚えたの?」
望「わりと最近、誰かが死んだとかで話題になっていたでしょう」
桂「そういえば…サッカーの代表選手だっけ」
望「鬼でも関わっていそうな不審な死に方だったようだし…」
桂「え」
望「私は関係ないわよ」
桂「そ、それはわかってるけど…アフリカにも鬼がいるの?」
望「事件の舞台は亀なんとかではなく、全く別の国だったみたいよ」
桂「そうなんだ…」
望「…で、笛吹きがどうしたんですって?」
桂「あ、うん。えーと…有名な童話のおはなしなんだけどね。ドイツのある町でネズミが大発生して困っていたところに…」
望「信じ難い話ね」
桂「だよね…子供が130人もいなくなったのは実話だっていわれてるけど、話に尾ひれがついて大袈裟になっていったような気がするよ…」
望「やっぱり鬼の仕業かしら?」
桂「えっ」
望「暗示をかけて子供を操るくらい私でもできるわよ。十年前に実際やってみせたでしょう」
桂「…あ」
望「その話の笛吹きとやらは、一度に操った数こそ多いけれど、ねずみと子供ばかりだし。私なら大人の、それも修行を積んで人並み外れた力を身につけた鬼切りなんかでも操れるわ」
桂「…ドイツにも鬼がいたのかな?」
望「どうかしら…でも件の笛吹きとやらは、実在するなら普通の人間ではなさそうよ」
桂「そんな気がするね…」
桂(ねずみを退治する力は便利だけど、それを人に…しかも子供に使うなんて)
桂「ノゾミちゃんはそんなことしちゃダメだよ?」
望「しないわよ。私を何だと思っているの」
桂「…鬼?」
望「そうだけど、桂を守る以外でそんな術を無闇に使ったりしないわよ」
桂「そ、そうだよね…」 桂「はぁー。いい湯だね〜♪」
望「桂ったら、若いのになんだか年寄りくさいわよ。…ま、今に始まった事ではないけれど」
桂「えー? でも温泉に浸かったら自然にそういう言葉が出てくると思わない?」
望「私は現身がないから、本来お湯に浸かる必要はないし…特に善し悪しなんて解らないわ」
桂(今日は露天風呂の日!ということで、経見塚の“さかき旅館”に来ました♪)
望「それより…」チラ
柚明「え?」
望「どうして柚明がいるのよ…あなたも現身ではないのだから、お湯に浸かる意味もないのでしょう?」
桂「そんなこと言わないの。せっかく来てもらったんだから、温泉にも入らなきゃ損だよ」
桂(私はノゾミちゃんに血をあげるためにどうしても体に傷ができるから、それをユメイお姉ちゃんに治してもらったんだけど…)
柚明「ごめんなさいね。二人の邪魔をするつもりじゃなかったんだけど…」
桂「邪魔なんて思ってないよ。わたしがユメイお姉ちゃんを誘ったんだもん」
望(…まあ、桂の家族である柚明が桂と一緒に暮らせなくなったのは私が原因みたいなものだから、そうそう邪険にもできないけれど)
桂「ユメイお姉ちゃんもお湯の熱さとか感じるの?」
柚明「ええ。…もううろ覚えだけれど、羽藤のお屋敷のお風呂より丁度いい湯加減だと思うわ」
望「羽藤の屋敷のお風呂って…あの大釜?」
桂「釜のお風呂も風情があっていいけど、やっぱり広さが違うよ〜」
望「ところで…今、桂以外は現身のない私と柚明しか居ないのだけれど」
桂「?…うん」
望「誰かが見ていたら、桂が独り言を呟いているように思われるのではなくて?」
桂「…う」
桂(お風呂でリラックスしすぎて、すっかり忘れてた…だ、誰もいないよね?)
「慣れてしまえば、思うほど大した問題ではありませんよ。私も人前でも気にせず尾花に話しかけたりしますし」
桂「人いたぁ!?…って、葛ちゃん!」
葛「はい。若杉葛(つづら)でございます♪」 桂(白狐の尾花ちゃんを連れた、若杉葛ちゃん。ノゾミちゃんと違って、見た目通りの実年齢…だけど、大人顔負けの知識を具えた生き字引)
桂「いつの間に来てたの?」
望「…またお邪魔虫が増えたわね」
柚明「私は気づいていたけれど…」
葛「千年を生きる鬼ともあろう方が、よもや私に気づかないとは…よほど桂おねーさんに夢中だったんですね」
望「う、うるさいわね。小さくて見えなかっただけよ」
葛「私は、現身に縛られて生きるただの人間ですからね。数年のうちに成長して、桂おねーさんより大きくなってしまいますよ」
望「大人になっても小さいままの人間は幾らでもいるわよ。あなたは見たところ一年経っても背丈が変わっていないようだけど?」
桂「まあ、まあ…二人ともそれくらいで…」
柚明「尾花ちゃんはどうしたの?」
葛「残念ながら一緒には入れないので留守番です。外にいますよ」
桂(…ちなみに、葛ちゃんも“ただの人間”とは言い難いんだけどね)
桂「んー。あったまったねー♪」
望「今日は外も充分暑いわよ」
葛「屋外はともかく、環境によっては冷房のきいた部屋にいて冷えてしまいますからねー。現代人は夏こそ熱いお風呂に入りたくなるものです」
望「ふーん…」
桂「そういえば、尾花ちゃんもネズミを捕まえたりするの?」
葛「ねずみ?…まあ、尾花も狐ですからできると思いますけど…お屋敷の蔵にでもネズミが出たりしました?」
桂「ううん。そうじゃないけど…ノゾミちゃんとハーメルンの笛吹きの話をしててね」
柚明「童話のおはなし? 懐かしいわね」
葛「ああ、そういえば史実とされるハーメルンの失踪事件は記録上6月26日でしたね」
望「そんなことまで知ってるの?」
葛「役に立たない事ほど覚えてしまうんですよ」
桂「尾花ちゃんがいれば笛吹きの人に頼まなくても大丈夫だね」
葛「そうですね。ネズミの天敵といえば蛇もいますけど…」
桂・柚明「へび?」
望「な、なによ。私はネズミ退治なんかに術を使ったりしないわよ!」 望「美味しかったわ。桂も少しは料理ができるのね」
桂「お母さんがお寿司作ってくれるとき、酢飯だけは私の担当だったから…」
桂(今日は、ちらし寿司の日。サクヤさんに教えてもらって薄焼き玉子は作れるようになったから…それと買ってきた具材とかいろいろのせて、結構きれいにできた♪)
望「酢飯さえできれば何でもできそうね。好きな物を好きなだけのせられるし、巻き寿司にしてもいいかしら」
桂「海苔巻きは意外と難しいよ…今の私にはちらし寿司が精一杯だよ…」
望「そうなの?…じゃあ、稲荷寿司とか…」
桂「お稲荷さんはもっと難しいかも…油揚げを柔らかく煮て、ほどよく味付けして、形もきれいに作るとなると…」
望「もう。練習してできるようになりなさいよ。ちらし寿司とナポリタンだけでは、いつか飽きてしまうわ」
桂(…そのナポリタンも自分で味付けしたんじゃなくて、レトルトのソースを使った手抜きだったりしました…)
桂「でも、食べてくれる人がいてよかったぁ…去年の夏までノゾミちゃんは血しか飲まないと思ってたから」
望「…まあ、桂の血に比べたら普通の食べ物から得られる力なんて微々たるものよ。でも桂が私のために作ってくれると…心が満たされるじゃない」
桂「ノゾミちゃん…えへへ。私も嬉しいよ♪」
望(…でも普通の食事が必要なのは、むしろ私より桂なのよね。いつかは、私が桂の食事を毎日三度作ってあげられるようにならなくちゃ)
桂「お寿司といえば、節分の恵方巻きってあるよね」
望「そうね。いつ頃からある風習なのかは知らないけれど」
桂「節分には豆を撒いたりもするけど、あれって本当に鬼に効くのかなぁ?」
望「私には効かないわよ。豆に何か特別な術でもかけないかぎり…」
桂「烏月さんが使ってた護符みたいな感じ?」
望「そうそう。あのときはよくも私に手傷を負わせてくれたわね」
桂「う…ごめんなさい」
望「冗談よ。見た目ほど大した痛みではなかったし、相手が桂でよかったわ」 桂「あ、なんかいい匂いがする…」
望「食べ物の匂い?」
桂「うん。たこ焼き…かな?」クンクン
望「犬みたいに匂いを嗅がないで頂戴。まったく…観月の民の影響かしら」
桂「サクヤさん?…確かに、いろんな物の匂いを嗅ぎわけられるみたいだけど…」
望「みっともないから真似するものではないわよ」
桂「はーい…そうだ、たこ焼き買って帰ろう♪」
望「家まで我慢できないの?」
桂「お腹も空いてるけど、今日は半夏生だから」
望「半夏生はわかるけれど、それとその…たこ焼き?が何か関係あるのかしら?」
桂「あれ、ノゾミちゃん知らない? 関西では半夏生の日にタコを食べる風習があるって」
望「関西って、京や畿内の辺りでしょう?…桂には関係ないじゃない」
桂「そ、それはそうなんだけど…」
望「風習にかこつけて、桂が食べたいだけではなくて?」
桂「だって美味しそうだし…ノゾミちゃんは食べたくないの?」ウルウル
望「私はどちらでも構わないわ。…ほら、買うなら早くなさいな」 桂「えへへ。買ってきたよー♪」
望「結局、今日も自分で料理はしないのね」
桂「だって、お店のたこ焼きみたいに作るのは難しいよ…そもそも自分で作ったことないし」
望「それこそサクヤにでも教わったらいいじゃない」
桂「サクヤさんかぁ…たこ焼きも作れるのかな?」
望「私は知らないわよ。…早く帰りましょ」
桂「待って、熱いうちに食べようよ」
望「食べようって…こんなところで?」
桂「ノゾミちゃんだって…お外で私の血を吸ったりしたじゃない」ヒソヒソ
望「また古い話を…まあいいわ。私にも一つ頂戴な」
桂「うん。熱いから気をつけてね」
フー フー ハフハフ
望「ふぐぐ…」
桂「おいしい♪」
望「〜〜!!」
桂「ノゾミちゃん?…大丈夫?」
望「…な、何なのこれは…熱すぎるわ!」
桂「おいしいでしょ?」
望「残りは帰ってから食べましょ。こんなに熱いのだから大丈夫よ」
桂「そう?…じゃあ行こっか」
望「ところで、どうして半夏生にタコなの?」
桂「えっ。うーん…体にいいから、かな?夏バテ防止とか、そんな感じだったかも」
望「滋養ってこと?…なら、タコじゃなくてもいいのではなくて?」
桂「んー。ほかに何か理由があったような気もするけど…忘れちゃった」
望「…桂の言う“風習”ほどアテにならないものはないわね」
桂「ま、まあいいじゃない。おいしくて体にいいんだから…」
望「…私は、もっと素晴らしい滋養のつく御馳走を欲しているけれど」チラ
桂「それは…帰ってからね///」 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
いつの日かあなたに対して相応の処分があるかもしれませんね。 先日の抗議文について、お伝えしておきたいことがあります。
くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
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あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
しかるべき機関への相談如何によって
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くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
内容は「 に対する抗議」と「 に対する更迭要求」
になっているなど論理矛盾を抱えている等の不備があり、
省庁出身者が作成したものでないことは容易に想像できます。
あなたが名を連ねたことは不可解でなりません。
特に、文書中で核心とされている部分については、
あなたはその場に居なかったのにもかかわらず名を連ねている点が、
他の三名とは決定的に違います。
少なくともあなたよりは私のほうが事実を知っている筈ですが、
恐らく、相当の覚悟のもと連名に臨まれたのでしょう。
熟慮を重ね覚悟を決めた上でのご判断であったとはお察ししますが、
管理職の立場にあってあなたのような判断をされる方も居られることを知り、
私にとってある意味良い勉強になりました。
一連の出来事について、私の出向元において事実関係を調査中ですが、
あなたの出向元を通じて事情聴取等がなされる際には、
ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
先日私が休暇を取得した理由について、
課長からお聞き及びでないかもしれませんが、
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くだんの文書は あて抗議文であるにもかかわらず、
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