>>839 (続き)
 こうした状況を受けて、欧州先進国は、政府も企業も抜本的な改革に取り組まざるを得なかった。高い賃金と短い
労働時間という高い水準の労働条件を前提として国際競争に勝ち抜く企業を作るという非常に難しい課題に取り組ん
だのだ。その間の苦しみは長期間続いた。概ね20年はかかったのではないだろうか。

 しかし、その後の自民党政権と経団連企業は、本来立ち向かうべき課題から逃げ続け、人口減少が確実であるにも
かかわらず、それに対する備えを怠った。さらに、現に減少に転じた後も、労働条件を上げるのではなく、請負や派遣を
拡大して労働コスト削減で競争力を維持しようとしたのだ。

 人口減少による人手不足で、単純労働者を中心に賃上げしなければ人が集まらない状況になっている。これは安倍政権
にとっては幸運なことだという見方をする人もいるが、欧州諸国の苦難の歴史を知らない人の言うことだ。

 しかし、こうした経産省の過ちは、実は経団連企業の経営者たちのできの悪さの証でもある。なぜなら、経産省の
政策の多くは、経団連企業の要望をただ具体化しただけのものが多いからだ。もちろん、それは天下りポストの提供の
見返りに行われている。
 経団連企業の経営者は、高い賃金を払っても儲かるビジネスモデルなど思いもよらないのだろう。ひたすら経産省に
対して、従来のビジネスモデルの維持を前提とした労働コスト削減のための政策ばかりを要求してきた。その結果が
今日の円安政策となっている。