公務員に届かぬ民間退職金

 私はいま、一つの新聞記事を手にしている。
それは2006年11月17日付の読売新聞に載った
「人事院調査『公務員の退職金は民間より少ない』」という記事である。

人事院の発表内容を伝えており、
「民間サラリーマンが受け取る企業年金と退職金の合計額は平均2980万円であるのに対し、
公務員は職域加算(公務員だけに上乗せ給付されている年金)を加えても民間より約20万円少ない2960万円」
となっている。

 この答申に対しては、さすがに各界から異論が噴出した。
読売新聞も社説の中で「疑問の多い人事院の調査内容」と題して批判している。 
私が怒りを覚えたのは、ほかでもない。自分で民間企業の退職金の水準を調べる統計作りを仕事にしているからだ。

 データはすでに7000人分集まっている。分析結果から次のような傾向がある。
 「中途採用・退社が多いため、勤務年数が40年に到達する人が少ない」
 「40年勤務し、定年退職したとしても、受け取る退職金はおおよそ600万円から1000万円の範囲である」

 そんな仕事をしているだけに、私は「人事院の調査はおかしい」と断言できる。
中小企業の場合、3000万円どころか、その3分の1もないのが実態だ。
大手企業の平均でも3000万円にはならないのではないか。
人事院はいったいどこを調査しているのか、と言いたい。

 民間企業はこの数年の低金利に対応して、多くのところが減額したり、能力重視に切り替えたりと、退職金規定を見直している。
ところが、そうした中でも無傷なのが公務員の世界である。
「親方日の丸」の体質の中で、労組は既得権益の保護を求めるのだが、そのしわ寄せは結局、国民負担となる。

http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/fukokei/fuko070608.htm