人手不足は本当に「悪」なのか 騙され続ける日本人
ttps://www.itmedia.co.jp/business/articles/1904/09/news050.html
 賃金が上がらないと、先進国で最下位の労働生産性はいつまでたっても上がらない。それは低賃金労働者を拠りどころとした
「低価格・高品質」競争が続くことでもあるので、日本のデフレ脱却は夢のまた夢ということだ。
 つまり、「人手不足=悪いこと」という常識が続く限り、日本に明るい未来は訪れないということだ。

 厚生労働省職業安定局の「人手不足の現状把握について」(平成30年6月1日)を見れば明白だが、日本の人手不足は局地的な
現象で、建設業、宿泊業・飲食サービス業、医療、福祉、運輸業、郵便業などのいわゆる「人手不足産業」と、そうではない産業に
大きな落差がある。
 そして、これらの分野別の分析を見ると、人手不足の原因・特徴は「労働者時間が長く、給与水準が低い」(運輸分野)、
「休日が少ない」(建設分野)、「賃金が安い」(介護分野・宿泊業、飲食サービス分野)とある。
 もうお分かりだろう。人手不足は人口減少うんぬん以前の問題で、過酷な労働条件にもかかわらず低賃金がゆえ働き手から
敬遠されるという「雇用ミスマッチ」が大きな要因なのだ。
 「雇用ミスマッチがあるのは事実だが、それを悪化させているのは人口減少だ」と食い下がる人手不足業界の方も多いかも
しれないが、この問題に人口が減った、増えたが関係ないことは既に歴史が証明している。
 例えば、人口が右肩上がりに増えていた1960年代も、日本は「深刻な人手不足」が社会問題になっている。人手不足が原因で
中小企業はバタバタと倒れ、1965年の中小企業白書によれば、倒産は4200件にものぼった。
 そう聞くと、「人は増えていたけれど、高度経済成長期でそのペースを上回るほどの人手が必要だったんだな」とか思うかも
しれないが、この事態を招いたのは「人の数」ではなく「賃金」である。

 「人手不足」の本質が「低賃金」だということは、1967年の日本生産性本部の調査でも明らかになっている。調査を報じた
記事の見出しが分かりやすい。

 それがなぜ今のように、「人手不足=人口減少が招いた弊害」みたいなイメージに変貌してしまったのか。
(続く)