月刊『紙の爆弾』2019年5・6月合併号
【最終回】この国の危険水域 西本頑司
政治家には見えない「移民」の真実
「外国人」とは誰か
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 このハイペースな外国籍増加を体感できる現象の一つが、「インドカレー店」ではないか。この数年、街の至る所に同様の店が
できている。東京はとくに顕著で、NTTのタウンページが庁さした「マーケティングデータ・統計データ」では、08年に全国で569軒
だったインドカレー専門店は、17年には2162軒と4倍弱にまで拡大、東京に至っては10万人あたり3軒以上の割合と、全国1位を
記録している。江戸川区西葛西は多くのインド人が暮らし、地元で「リトルインディア」と呼ばれる。
 しかし急増したインドカレー専門店の主役はネパール人だ。これは数字にも表れており、平成元年には400人弱だったネパール人
は、17年度で8万人と200倍にまで膨れあがった。気ががつけばネパールは、台湾籍よりも多く、日本で6番目に多い外国籍となって
いるのだ。対するインド国籍は2000人から3万人強へ。インド国籍者にはIT技術者も多い。その意味でインドカレー店の大半が
ネパール人経営であることがわかるだろう。
 なぜ、これほどネパール人経営のインドカレー店が増えたのか。以前、別の雑誌で取材したことがあった。
 そこでわかったのは「タンドリーブローカー」の存在だ。法務省が「タンドリーチキンを提供する店には4名まで就労ビザを発給する」
という方針を打ち出した結果、日本への就労を斡旋するブローカーが生まれたのだ。
 ちなみにインド人は(ネパール人もだが)、タンドリーチキンはおろか代名詞でもある「ナン」も、ほとんど食べない。基本は全粒粉を
使って平たく焼くチャパティだ。タンドリーチキンを焼くタンドールの釜は、インドでも特殊な料理器具だという。それで焼くナンは、
食べる機会そのものがなく、タンドリーチキンやナンを日本で初めて食べたというインド人も少なくない。
(続く)