成長の源泉はどこに(上) 新しいモノ・サービスが主導
吉川洋 立正大学長
ttps://www.nikkei.com/article/DGXKZO43083050Z20C19A3KE8000/
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 経済成長はいかにして生まれるのか。日本で注目を集めるのは人口動態だ。日本の人口は2115年には5050万人まで減少する
(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計)。実際に働く人の数である労働力人口は、高齢者や女性がどれだけ労働市場に
参加するかなど様々な要因に依存するが、やはり急激に減っていくことに変わりはない。労働政策研究・研修機構の推計では、
現在6530万人いる就業者は40年に、経済成長と労働参加が進むケースでも6024万人、進まないケースでは5245万人まで減る。
人口が減るのだから成長できるはずはない、よくてゼロ成長だと考える人も多い。
 人口の減少が一国経済にマイナスの影響を与えることは間違いではない。しかし経済成長は決して人口だけで決まるものでは
ない。「1人当たり」のGDPの伸びの方がはるかに大きな役割を果たすからだ。
 例えば中国経済は少し前まで10%成長を続けていたが、人口の増加率は1%ほどだ。年々1人当たりGDPが9%ずつ成長して
いたのである。中国経済の成長率は6%程度に減速してきたが、人口動態が変わったわけではない。1人当たりGDPの伸び率が
9%から5%に低下したのだ。
 1人当たりGDPの伸びが定量的に大きな役割を果たすという事実は、人口減少時代に入った現在の日本経済にも当てはまる。
過去20年間、日本経済の実質経済成長率は平均0.8%だ(1996〜2015年、2011年基準)。既に労働力減少時代に入っているから、
労働の成長への寄与は年平均マイナス0.3%だ。しかし「投入労働当たりのGDP」が1.1%成長したことにより、0.8%の経済成長が
実現した。
 経済成長の柱である1人当たりGDPはどのようにして伸びるのか。機械など資本投入の貢献もあるが、成長の源泉ともいうべき
最も重要な要因はイノベーション(技術革新)だ。
(続く)