移民政策の現状と課題(下) 安易な外国人依存避けよ
中島隆信 慶応義塾大学教授
ttps://www.nikkei.com/article/DGXKZO2987446026042018KE8000/
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ポイント
○移民受け入れの有無は経済的に大差なし
○アジア周辺国でも人手不足生じる可能性
○国内に多数いる高度人材の活用が不可欠

 …(略)…
 翻って日本では安倍政権は「移民政策をとる考えはない」と表明してきたが、在留外国人は既に250万人を超え、5年前から
26%増えた。また不法滞在者は6万6498人で、増加率は7%を超える。
 …(略)…
      ◇   ◇
 移民に関する経済学の実証研究はこれまで数多くなされてきた。だが筆者と明海大学の萩原里紗氏による「人口減少下における
望ましい移民政策」(経済産業研究所)やベンジャミン・パウエル米テキサス工科大教授による「移民の経済学」などのサーベイを
みても、研究成果が政策に役立つかどうかは定かでない。
 明確なのは、生産性の低い場所から高い場所への労働移動が社会全体の所得を増やすということだけだ。国境を越えて移動する
人たちはおおむねこの原則に従って行動すると思われるため、世界全体の生活水準向上という観点に立てば移民は是とされる。
 ところが移民の受け入れ国に与える影響となると話は違ってくる。この点に関する国民の関心事は、(1)成長に寄与するか
(2)国内の職を奪わないか(3)財政を悪化させないか(4)治安が悪くならないか――の4点にほぼ絞られる。このうち経済学の対象外
となる(4)を除けば、いずれも前提条件の置き方次第でプラス・マイナス両面の結果が出ており、しかもその経済全体に与える影響
は比較的軽微だ。要するに移民を入れても入れなくても経済的には大差はない。
《続く》