文藝春秋 2018年12月号
▼霞が関コンフィデンシャル
ttp://bunshun.jp/articles/-/9575

★入管法の「開国派」

 所轄する法務省は、受け入れに消極的な姿勢を取ってきた。菅長官に近いとされる黒川弘務法務事務次官(56年、
司法修習生)でさえ「当初はさすがに慎重だった」(首相周辺)とされる。
 しかし、菅長官は、安倍首相が再登板して間もない時期に入国ビザの要件緩和を法務省に飲ませ、外国人観光客
を一気に増やした「成功体験」がある。入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げする案を見返りに、渋っていた
法務省をまたもや押し切った。
 改正案の中心になっている佐々木聖子官房審議官(60年)は東大文学部出身で、法曹資格を持たない入国管理の
専門家として歩んできた。若手時代にはシンガポールで移民労働を研究し、「現場感覚を大事にするタイプ。管理や
取り締まりだけに陥らないやり方を探っていた」(局長経験者)と評価されている。
 法務検察、警察は外国人労働者の門戸をできるだけ狭くしようとする「鎖国派」が多く、杉田官房副長官も「内心
はできるだけ厳しい規制を望んでいる」(内閣官房関係者)という。また、厚生労働省も「不況になれば、職を失った
外国人労働者がハローワークに詰めかけるのでは」(幹部)と心配している。
 入管法改正は人手不足に悩む経済団体などが求めてきた。自民党では塩崎恭久元厚労相らが支持しているが、
治安悪化などを懸念し難色を示す議員も少なくない。佐々木氏の著作が朝日新聞社から出版されていたことを
問題視する保守系議員もいる。