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(5)一般国民 政治過程から疎外
九州大学准教授 施光恒

 先に見たようにグローバル化、特に資本の国際的移動の自由化に伴い、各国の経済政策は大きく変わりました。
自国内の資本の流出を避け、海外から投資を呼び込むために、各国政府はグローバルな投資家や企業に受けのよい政策を
専ら採用するようになります。その半面、一般国民の声は軽視されがちになります。
 これは民主主義から見れば問題であると多くの研究者が指摘してきました。例えばドイツの政治経済学者W・シュトリークは、
経済のグローバル化以降、各国では経済権力が政治権力に変換されやすくなり、一般国民が自分たちの利益や要求を
政治経済的仕組みに反映させる力を大幅に低下させたと論じています。

 個々の事例については何が公正なのか見解が分かれるかもしれませんが、グローバル化に伴う資本移動の自由化が、
グローバルな投資家や企業の政治力の増大を招いたこと、その半面として一般国民が政治過程から疎外されているという
感覚を強く持つようになったとは言えるでしょう。ポピュリズム(大衆迎合主義)の政治の噴出を懸念する声も耳にしますが、
背景には以上のような各国国民の不満の高まりがあることを考慮する必要があります。