スウェーデン暴動の根底にあるもの(上)
移民統合政策は失敗したのか?〜北欧・福祉社会の光と影(13)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37913
■平等な社会の構築に涙ぐましい努力を重ねてきたスウェーデン

 この事件は、国内外のメディアで連日大きく報道された。
スウェーデン人もショックを隠しきれず、対応に右往左往している様子だ。
国内で現在大きく議論されていることは、「我々の移民統合政策は失敗だったのか」だ。

 スウェーデンのシステムは、よく言われることだが、福祉依存の罠にはまり
、労働市場に参入するのが困難で、社会への統合を妨げる要因になっている。

 若い移民がなかなか仕事に就けず、これが反社会的な行為を促すきっかけになる。

 統合政策、つまり社会の成員全員が公平・平等である社会の構築に向けて、スウェーデン人は涙ぐましい
ほどの努力を重ねてきた。
差別オンブズマンを設け、 性別や人種、民族、障害や性向などに対するあらゆる差別を徹底的に監視し、
撤廃のために訴訟を起こすなど精力的に活動している。

■母国語教育まで与える手厚い保護政策

 さらに、移民・難民の保護政策は手厚い。2011年に、移民政策に関して中道右派連立政府と緑の党との間で
「歴史的な」合意が形成され、移民政策の方向転換が決定した。

 合意の内容には不法滞在者にも医療と教育を受ける権利を認めることも含まれており、
この施策変更に要する費用は、最高で17億クローナ(約258億円)かかると推定されている。 

 いずれ自国に戻った時に困ることがないようにと、母国語教育も行っている。
財政が追いつかないため日本語をはじめとする少数言語まではまかなえないのが実情だが、
しかし中国語やアラビア語を家庭内で使っている子供は、その言語を学ぶことができる。