「ショーケン」の中の、ブラックレインに関する話

「当初は、ダグラスの部下がトム・クルーズ、日本のヤクザがぼく、
アル中で酔いどれ刑事が勝新太郎(役名も“市”)、ヤクザの大親分が藤山寛美だった」

「勝さんは“英語が出来ない”と最初から腰が引けていた。一生懸命口説いたけど結局ダメ。
プロデューサーのダイアンに代わりに誰かいるか訊かれ、高倉健しかいない、と答えた。
ただ、アル中はやりたくないという事で、カタブツのキャラクターに変更された」

「寛美さんはその点、乗り気だった。そのうち“一生懸命やるから、わしの借金返してな”と言い出した。
いくらあるのか聞いたら、35億円だという。イヤな予感がしてきた」

「色んな揉め事が続き、6ヶ月が過ぎた。もう関わってはいられない。ぼくも両手を上げ“226”の撮影に入った。
すると優作、根津、小林薫らがオーディションを受け、優作が合格した。安心して226を撮っていると、
ダイアンから“やっぱり来てくれ、至急来てくれ、金ならいくらでも出すから”と電話がかかってきた。
何て勝手なことを言う人たちだろう。考える余地はなかった」

「完成した作品を見たら、一番変わっていたのは優作がアンディ・ガルシアを殺すシーン。
最初のホンでは、ぼくはトム・クルーズを地下鉄のホームからトンと背中を突く予定だった。
もっと日本のノアール的な要素の濃かったホンが、いかにもアメリカっぽいアクション映画になっていた、という印象だ」

「また優作、真似しやがって・・・。あの映画の優作の目は、影武者でおれがやった武田勝頼の目。
最初に優作が出てきたときすぐピンときた」

「おれは優作をライバルと思ったことはない。おれのライバルは沢田研二。
しかし優作の方はおれをライバルだと思っていた。生きてるときはあの野郎、と思っていたけれど、
あれほど必死になってぼくのあとを追いかけてきた役者もほかにいない」