>>267
もう一度>>140-141の問答を読み返してほしい。実を言えば>>141を書いたのは
私なのだが。
我々が「偉大な兄弟−彼以外の全員」という構図を巧みに利用している理由は、
それが権力の維持に最も適しているからである。独裁者が世襲に失敗した例は
歴史上枚挙に暇がない、というより大半のケースで失敗しているわけだが、それを
防ぐ有効な方策とは何か。寿命に限りがある一個人に代わって、集団で権力を
維持すればよい。
偉大な兄弟が実在し、彼が実際に権勢を振るっていた時代があったかも知れない。
或いは、彼は当初から架空の存在であったのかも知れない。それはどちらでも構わ
ない。重要なのは、偉大な兄弟が、或いは党が、この体制を維持するために有用な
道具であるということだ。我々は全てに関して無責任になれる。偉大な兄弟が、
或いは党が、すべてを引き受けてくれるのだから。支配する側にとって、これほど
楽なことが他にあると思うかね? 党に従う限り、個人が責任を追及されることは
絶対にない。君の言い方に従えば、我々は被支配者になることによって初めて支配者に
なれるのだよ。もちろん自分の意志によってではなく、それを党が望んだからだ。
1984の世界では、元来どのようなイデオロギーによって体制が確立したのか曖昧に
されている。どんなイデオロギーであるかは意味がない。堅固な支配体制を確立する
ことそれ自体が終局的な目的なのであって、イデオロギーを実現することが目標で
あった時代はとっくに終っているのだ。