昨日のラジオのキーワードは「エンゲージメント」。
「約束」という意味をすぐに思い浮かべるだろうが、「参加」「関与」という意味もある。
おそらく語源を同じにするフランス語「アンガージュマン」はサルトルや現フランス大統領のマクロンがよく使っていて、「政治参加」「社会参加」と訳されることを思えばよい。
「エンゲージメント」の対義語は「シニカル」とMCがエンディングで述べたのは、「社会で起きていることに知識人が頬被りして高等遊民のような生き方をすればアンガージュマンとはならない」というサルトルの言葉を意識したのかもしれない。
ただし、社会一般への参加ではなく会社に深くコミットメントするというのがラジオでは主に語られた、

エンゲージメントが高い企業がアイデアは生まれやすいとMCは言う。
この会社のためにならと努力を惜しまない社員が多いからである。
そして、良いアイデアをひねり出す最大の秘訣は長時間考えることであるとも言っていた。
プロジェクトに直面している間だけでなく、風呂やベッドなどでのプライベートの時間でも始終考えていればアイデアを閃めかせることができる。

今月の『100分de名著』では、アリストテレス『ニコマコス倫理学』が取り上げられているが、有益性・快楽・人柄の三種が友愛にはあり、
「他の二つとは違って、状況によって条件づけられないので、人柄による友愛は持続する」といったことが語られていた。
(月曜日が月に5回あるときには、第4回が繰り返されるので、上の内容は明日も放送される。)
「この会社のためになら」と思わせるのは、人格的に敬愛できる上司や同僚が多い会社、あるいはそういう雰囲気で全体が包まれている会社ということになるだろう。
給与や福利厚生が高水準の会社はそれはそれとして素晴らしいが、利用可能なものとしての欲得ずくのものにしかならず、プライベート時間まで犠牲にすることまではしない。
それに対し、「この会社のためになら」というのは無意識の部分にまで影響し、ぼんやりとだがいつも会社のことを考えるようになる。
そして、別のことをやっているふとしたときに、得てして良いアイデアというのは生まれやすい。

欅坂へのエンゲージメントはどうだったのか?と訊かれて、長濱は次のように答える。
「歌割とかダンスポジが与えられていたので、休まないようにするという義務感はありました」と注釈を付けがらも、「選抜やフォメが入れ替わり、自分ができることは他人にもできるので忠誠心はありませんでした」と答える。
長濱が所属していたときには欅坂は選抜制はなかった。
直に体験した記憶が曖昧になっていることからも分かるように、欅坂のときの現実感はかなり薄かったんだろう。
一方で、「カルト宗教みたいだ」と一部のヲタからは心なく詰られたように、何人かのメンバーはかなり強い忠誠心を持っていた。
ここからはラジオの趣旨とは関係がないのだが、そういうメンバーと長濱の温度差の原因を想像を交えて分析してみる。

欅坂で誰もが真っ先に思い至るのは平手友梨奈の急激な変貌である。
デビュー時には、平手は朗らかで気さくで天真爛漫だった。
わずか一年でミリオンを売り上げたのはSONYにとっても、AKBや乃木坂とは異なった世界観で作詞できる場となるのは秋元康にとっても、欅坂はドル箱で貴重だったと思う。
その中枢にいる絶対的センターである平手が壊れかけていたなら、その修復を運営はやっていただろうし、交換日記という形でのケアを秋元康は実際に行っていた。
にもかかわらず、平手を元に戻すことはできなかった。
シングル『風に吹かれて』のときだったと思うが、他のメンバーが主面を向きやる気を漲らせているのに、中心にいる平手だけが俯き悶々と苦しんでいる表情がゴールデンの歌番組で歌う前に映し出されたのは異様だった。
欅坂のことをある程度知っていれば、あれは演出ではなくガチだったというのは誰もが分かる。

平手の苦しみの原因が欅坂内のことにあるのなら、会社を上げて、あるいは秋元康自らが乗り込んで、簡単に解決できたはずだ。
そうではなく、プライベートで深刻なトラブルに巻き込まれていたためだとしか考えられない。
中三のときから実家に帰省していないという噂もあったし、もしかすれば家庭内にその原因があったのかもしれない。
そして、そのことを知れば誰もが深く平手に同情するが、周知されれば、その事実自体が平手をさらに苦しめることになりかねないといったものであるとしか考えられない。