黒髪ショートを後ろで小さくまとめ、水色のノースリーブにスカートの女性が入ってきた。
「愛佳ー行くよー。」
ノートを手に持った志田は振り向いて
「いまいく。」と告げた。
「ま、いいや。明日返す。」
慌ただしくそう言いながら僕に手をふり教室を出ていった。
気がつけば誰もいない教室。
そういえば彼女の名前を聞いていない。志田はいつも彼女と一緒にいる。僕はたびたびそれを見かける。志田は彼女のことを理佐と呼ぶ。名前は理佐というのだろう。しかし、苗字はわからない。