ここの皆様に影響を受けて書いてみました。


ここは中央総武線東中野駅から徒歩20分のボロアパートけやき荘。その一室で眠る男がいる。

ノックの音で目を覚ました。僕は友達がいない。だから、この部屋をノックするのは家賃の催促をする大家くらいだ。頭を書きながら軋るドアを開けた。
淡い色のワンピースにつば広の帽子。手には紙袋を下げ、艶のある長い黒髪の女性が立っていた。
「はじめまして。私こんど隣に引っ越してきた菅井友香と申します。」友香が風 に攫われそうなつば広の帽子を手で抑えながら言った。
「あっ、ああ」言葉が喉の奥で絡まって出てこない。しばらく人とコミュニケーションをとっていないからだ。
「よかったらこれどうぞ。」友香は紙袋を僕に渡した。風月堂。たしかそう書かれていた。忘れもしない五月二日。これがはじめての出会いだった。