「さっきから何書いてるの?」
詩織が聞いてきた。
僕はノートを見せながら言う。
「メモだよ。すぐに忘れるから」
「へえ、すごい。私なんか全部フィーリングで覚えてるよ」
「そっちの方がすごいよ」

美術館は空いていて、順路の途中で長い時間立ち止まることができた。
詩織はただ絵を眺めているだけで、メモはしていなかった。
それでも、ロビーでの会話は、僕よりも情報量が多かった。

美術鑑賞は午後四時で終了する予定だった。
が、しかし僕たちは大切なことを忘れていた。
グループメッセージには不吉な文章が踊っている。
『今日、打ち上げどうするの?』
パーティーピーポー齋藤冬優花からだった。
結局、美術鑑賞をしていない齋藤と尾関が打ち上げに参加した。

「おーい、みんな飲め!」
齋藤のペースに巻き込まれて、ビールやらチューハイやらを喉に流し込み続けた。
僕と齋藤は酒に強かったが、問題はあとの二人だ。
尾関は、ほぼ奇声に近い笑い声を上げ続け、レモンサワーに付属したレモンをしゃぶり回していた。
詩織は、半笑いのままテーブルに肘をついて眠っていた。


「ねえ、詩織ちゃん起きて。もう二人とも帰っちゃったよ」
僕は彼女の体を揺すった。
パーティーピーポー齋藤は、慣れた手順で尾関をタクシーに乗り込ませた。
「詩織ね、本当はお酒強いんだよ。じゃ、後はヨロシク」
そう言い残して、帰っていった。

(つづく)
原案から離れちゃってるww