ブレーンワールド(その22)
彼女たちが砂浜を去った後に、ねるに尋ねた。
「なあ、ねる、なぜあのコたちの名前を知ってたんだ?あのコたちが自己紹介するときには向こうで座っていたんじゃなかったのか?」
ねるの気持ちをものにできたという思い込みの上に、さっきの「あいつ」の勢いのままに調子づいてそんな口調になってしまった。
「いえ、いましたけど」とそっけなく答えた後に、「用事を思い出したので私も帰ります」と冷たい表情で言って、踵を返して歩き出した。
先ほどのあのコたちの話に俺は混乱していた。
この世界や他人が自分の想像の産物であるかもしれないという妄想をしたのなら、それはわかる。
この世界の中の全ての人やモノや出来事もこの世界そのものも自分自身の自我の中で認識されるから、自分が消えればこの世界も消失する。
おそらく幼い頃にならそんなことは誰でも考えたことがあるはずだ。
しかし、自分が誰かの想像の産物だというそんな奇怪なことを思うようなことがあるのか?
そんなことを考えながら、ねるを見送った。しかし、ねるは一度もこちらを振り返ることはなかった。
「ねる」と唐突に呼び捨てにしたを怒ってんだな?、でもすぐに仲直りはできるはずだとこのときは考えた。(続く)