>>855

柔整師がほねつぎなんかやったらあかんやろ笑!!
変な話やろ!変な話や!笑笑
真面目な話、、俺らと患者のお互いの為やで実際!笑
何かの間違いで柔整師んとこに骨折脱臼が来たら救急車呼ぶんが一番や!爆笑
考えてみーや、神経血管の損傷あったら、悪うなかっても俺らの責任になるかもしれへんやろ?笑
怖いがなー!整復も包帯もいらんねん笑笑
でもなーベーイモ!救急車ぐらいは呼べなあかんでー!笑
立派なほねつぎになられへんどー!笑笑
昔はなー・・・これぐらいの・・・撮影してなー・・
俺の若い時代はなー・・・・今の若い奴はなー・・・

「あはは・・・・」

酔っ払い院長のドヤ顔自慢話は続く。
院長の奥さんからの「そろそろ家帰れ電話」が鳴るまでの辛抱だ。
目の前の見慣れた顔を見るのにウンザリしていた私は伏し目がちで適当な相槌を繰り返した。

ファーストコンタクトから5年・・・か。

あの日に現れた柔整業界の違和感は、未だに私を蝕み続けている。
4人いた先輩達も同じモノに蝕まれていたのだろう。
現在、職場には先輩も後輩もいない。院長と私の2人だ。
先輩達は全員退職&転職済みだ。

今ならよく分かる。
私が足を踏み入れた時、既に柔整業界は祭りの後だったのだ。
分かっていて引き返さなかった私はズルズルと学校を卒業し不幸にも国家試験も合格。
そのまま見慣れた職場へと就職した。

「賑やかな祭り会場から、1人、また1人と去っていく」

先輩と大勢の患者達、そして熱気は、いつのまにか、どこか遠くへと消えていった。
この酔っ払いの話は残された者の抵抗のようにも聞こえる。
ん?何に対しての抵抗だろう?

(携帯の着信音♪)

ようやく院長の奥さんからの電話だ。
今日も救われた。
ベロベロに酔ったコレを運ぶのだけは勘弁してほしい。

会計を済ませ、店を出る。
心地良いはずの秋風が生温く気持ち悪い。
私は寝落ちしそうになっている院長を車に乗せた。
運転手は、お酒を飲めない私の早くからの役目だ。
このコンパクトカーに院長と先輩をギュウギュウに乗せていた時代が懐かしい。
当時と比べると静かで快適な車内だが、、、。

院長宅に着き、院長を奥さんに引き渡す。

「ベーイモさんいつもごめんなー!まったこの人こんなに飲んで!院長パジャマ!ほらパジャマ!着替え!あ、ベーイモさん疲れてるやろうから、はよ帰って休んでなー!ホンマ恥ずかしいはこの人っ、もう!はよ着替え!」

「いえ、では帰ります、おやすみなさい」

車に乗り、院長のヨダレで汚れた後部座席の肘置きを見て溜息をつく。
私は何をしているのだろう。
・・・・・さっさと帰って寝よう。