30年ぐらいの前の話なんだけど、その当時オレは市ヶ谷で自衛隊観閲式の為来ていた。
泊まった所は外来宿舎と言われる10棟くらいあるぼろい二階建ての建物のうちの一つ。
3人部屋で2段ベッドと1人用ベッドがひとつづつ。備え付けの木製ロッカーなんかは落書きでいっぱいだし、
いわく付と言うことで使われてない部屋なんかがあって、とにかく気持ち悪いとこだった。
そんなトコにオレともうひとり、2人で泊まることになった。


あるとき予行演習で制服に着替えてると、2、3人の古いオッサン陸曹連中がドカドカとやって来た。
「おーっ!ココだよ」なんて言ってる。 部屋で着替えてるオレたちを見てびっくりした様子で、
「お前らここで寝泊りしてるのか?」
「そうですけど何か?」
「知らないのか?昔この部屋で自殺があって、この部屋ずっと閉鎖されてたんだぞ。おかしいなぁ・・・。」
そのうちの一人が扉を見ながら 「ほら後残ってるだろ」 たしかに板張りして釘うたれてた跡。
「ふざけんなよ〜」と思いながらふと思い出す。ロッカーの落書き。
でっかく首吊りしてる似顔絵の絵。その下に名前と昭和5○年○月○日。
それを見せると、「そうそうこいつだよ。お前らこんなトコで寝て何もねーのか?」
するとオレの相棒は
「この間寝てたら毛布がずり落ちて目が覚めて、引っ張ったら引っ張り返された・・・・。」
俺かと思ったらしいけど、そのときはオレは違う部屋に行ってて部屋には一人だった。
怖くなってその日以来その部屋では寝なかったよ。

相棒は無神経で一人部屋だって喜んでたけど、ひとりじゃないってことに気づいてなかったようだ。