「苦痛と快楽の非対称性」です。
ここでいう苦痛 pain とは害悪 harm の一例であり、
快楽 pleasure とは利益 benefit の一例です。ベネターはまず、
以下の2つの命題は議論の余地なく正しいとします。

(1)苦痛の存在は悪い。
(2)快楽の存在はよい。

快と苦を善と悪に対応させていることから、
功利主義的な考え方が土台にあることが示唆されます。
(1)と(2)からわかるように、苦痛の存在と快楽の存在の間には対称性が見出されるのですが、
しかし、苦痛の欠如と快楽の欠如との間にはこのような 対称性は見出されません。

(3)苦痛の欠如は、たとえそのよさが誰によっても享受されていない場合であっても、よい。
(4)快楽の欠如は、快楽を剥奪されたがゆえに快楽を享受できなくなるような人間がいるのでない限り、悪くない。