各務原でアルゼンチンアリ急増 生態系破壊も、早期防除を

 【岐阜県】各務原市が、悪名高いアルゼンチンアリの“侵略”を受けている。県と市による初確認は
今年3月。生息域は当初、鵜沼東町の公園周辺約300メートル四方とされたが、アリの生態に詳しい
大垣北高校生物科教諭の木野村恭一さん(岐阜市)らの調査で、実態はその3倍近く広いことが分かった。
木野村さんの案内で現地を見て回った。

 マンションの駐車場に黒い流れが何十メートルも続く。アルゼンチンアリの行進だ。コンクリートの
割れ目から木陰にある芝生の下へ次々と潜り込んでいく。暑さと湿気が苦手なため、石垣のすき間や
プランターの下など涼しい場所に巣を作る。

 4階に住む主婦(78)は昨夏の夜中、じゅうたんの上に“長い棒”が落ちているのに気づいた。拾い上げ
ようとしてびっくり。室内に侵入したアリの群れだった。「ジュースをこぼした場所だった。どこから入って
来たのか分からず、すごく怖かった」

 東部の民家周辺。「ここら辺の巣は地表近くの蟻道(ぎどう)でつながっています」と木野村さん。畑に
置いてある瓦をひっくり返すと、隠れていた数十の巣穴から働きアリが文字通りわき出てきた。すぐ隣の
板の下からもワラワラと。

 一般的なアリは1つの巣に女王が1匹。新しい女王は別の場所に移って巣を作り、2つの巣の勢力争い
の結果、生息域はあまり広がらないとされる。しかしアルゼンチンアリは、何匹もの女王が同居。すぐ近くに
“分家”ができるため、1年間で100−200メートルも生息域を広げるという。欧州では南イタリアから
スペインまで沿岸約6千キロにもわたる超巨大コロニーが発見された。

 しかも攻撃力はすさまじい。自分より大きいアリにも襲いかかり、生息域を奪っていく。木野村さんらの調査に
よると、第一発見地の桑原野山西公園周辺では、この辺りに生息する在来種23種のうち、生存を確認できたのは
2種のみ。ほとんどが駆逐された可能性があるという。

 県と市は初確認後、自治会を通じて鵜沼地域の約500世帯に、防除に協力を求めるチラシを配った。
しかし市民からの問い合わせは15日現在、10件以下。被害報告も特にないという。

 アルゼンチンアリは、寝ている体をはい回ったり、室内の食べ物にたかったりする不快害虫。積極的に人を
かんだりすることは少ない。しかし甘いみつを出すアブラムシなどの農業害虫とは共生関係にあり、木野村さんは
「野菜や草花への被害が広がるかもしれない」と話す。

 生態系への影響を防ぐため、不可欠なのは早期防除。薬剤を吹き付けるスプレー型や巣に運ばせる餌型などの
市販殺虫剤はもちろん、熱湯や中性洗剤を薄めた水でも高い効果が得られるという。

 木野村さんは「このままでは周辺の都市部すべて、アルゼンチンアリだけになってしまう」と指摘。「行政だけで
封じるのは難しい。例えば防除デーなどを設け、住民総出で退治する必要がある」と訴えている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070617-00000014-cnc-l21