超高温酸化物融体の安定浮遊を達成 【ISS搭載ELF(静電浮遊炉)】
ISS日本実験棟「きぼう」船内に搭載された静電浮遊炉ELFにおいて、2000°Cを超える融点を持つ酸化物の浮遊溶融に成功し、
更に3,000°C以上の超高温状態で安定して位置を維持する技術を確立した。

・アルミナ等の酸化物は2,000°C以上の融点を持ち、容器を用いた通常の方法では溶融が困難であり、
かつその融体は容器と反応するため純度の維持が難しい。そのため、酸化物融体の物性測定は物質科学における未開拓領域である。
従って、酸化物ガラスなど新物質・材料設計に供する熱物性データを取得するために、静電力を利用して微小重力環境にて
試料の浮遊溶融を行うELFを有人宇宙技術部門と共同開発し、平成27年度から「きぼう」船内にて装置運用を開始している。
・高融点酸化物である酸化エルビウム(融点2,400°C)を浮遊溶融させ、3,000°C以上にて安定して位置を維持することに成功した。
・ドイツが開発した微小重力実験用電磁浮遊炉TEMPUSは高温で導電性の高い金属や半導体を試料とするが、導電性が低く高融点の
酸化物試料を用いた浮遊・溶融実験を微小重力環境で実現する手段はELFが世界唯一である。
これまで実現出来なかった超高温酸化物融体における熱物性の高精度計測を、酸化エルビウムを端緒として
日本が世界に先んじて可能にした顕著な成果と評価する。
このような地上では出来ない熱物性計測の推進により、未知の酸化物の溶融状態の解明や新機能を持った
革新的な物質の創製が今後期待される。