リスクに関わる係数の一つであるLOC(飛行士の死亡等の破局的な事故に繋がるリスク)は、
チャレンジャーやコロンビアの事故を経て、さらに厳格に規定され、審査されるようになったとされる。
NASAは馬鹿じゃない。悲しい破局的な失敗を経て、航空宇宙におけるリスクをコントロールするノウハウを
ひとつの学問領域レベルにまで向上させた。

NASAによる有人飛行の認証は、契約企業(例えばスペースXなど)との共同作業なんだよ。
上昇中の、いついかなる時でも安全に脱出できるシステムとなっているか、
最大重力加速度とか、軌道上での機体寿命とか、微小隕石やデブリとの衝突安全性能とか、
膨大な審査項目があるが、やはり重要なのは、クルー・アボート・システムだろう。

乱暴な言い方をすれば、例えばアボートシステムの信頼性が95%なら、
ロケットが20回失敗しても、死亡事故は1回だけで済む計算だ。
ミッションは失敗し、高価なロケットは失われるが、クルーの生命は守られる。

そうやって、クルーが宇宙船に乗り込んで、打ち上げられ、軌道上で過ごし、数カ月後に帰還する、
その過程全体の安全係数として「1/270」を設定しているのだ。
無人の、旧バージョンのロケット本体の、過去の成功率の話をしているわけでは無いだけではなく、
「これから行う有人活動」に向けての、慎重に審査された「新システムにおける計算上の予測値」なのだ。
その後、実際に運用が始まった後の運用実績(事故率)とは、必ずしも一致しない。
後者が劣っていた場合、再検討されて、さらなる改善が施されるということだ(シャトルのように)。

https://www.airspacemag.com/space/certified-safe-281371/
NASAで商業有人輸送プログラムの責任者をしていた人のインタビューが掲載されている