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――量子コンピュータの進化において、課題や懸念事項はありますか。

 技術面での課題を挙げるとすれば、まずは、安定した多くの数の量子ビット(Qbit、量子情報の最小単位)を作り出すということです。さらに大きな課題は、多くのエラーを発生することなく、大量のQbitをつなげるということです。

 もうひとつは、量子コンピュータ上のプログラムを最適化することです。これまでのプログラムとは大きく異なるものが必要であり、そのための取り組みは課題のひとつだといえます。

 一方で社会への影響という点では、これまで以上にディスラプションを加速することになるという点が挙げられます。
例えば、どんな強さの暗号化技術も、量子コンピュータを使えば瞬時に解読されてしまう、ということになりかねない。今までのすべてのセキュリティ技術が無意味なものになってしまう可能性もあるわけです。

そこで大きな問題となってくるのは、「誰が量子コンピュータを持つのか」「誰が量子コンピュータを使うのか」ということになります。持つ者と、持たざる者との差が大きく、持つ者が巨大な優位性を発揮することになります。

 量子コンピュータを持っているものが勝つ立場になり、それ以外のコンピュータを持っていても、何の意味もなくなるということが起きる。持つ者が、確実に勝利を収めるというタイミングが訪れるわけです。
言い換えれば、どの国や企業、個人に対して、量子コンピュータへのアクセスを認めるのかが大切な要素になってきます。