まず電荷保存だ。導きたい式の形はわかっている。電流をJ、その地点の電荷をρとして、
divJ = -(1/ε)(∂/∂t)ρ というものだ。回路の結束点に電荷などないので、回路的に
は divJ = 0 が言えればよい。

マックスウェルの式から、divE = ρ/ε (1)と、rotB = J + ε(∂/∂t)E (2)を
とってくる。(1) を時間で微分する。div(∂/∂t)E = (∂/∂t)ρ/ε (3)。
(3)の左辺の (∂/∂t)E に、マックスウェル(2)式を変形した
(∂/∂t)E = (rotB - J)/εを代入して、div(rotB - J) = ρ。つまり、
div rotB - divJ = (∂/∂t)ρ (4)。(4)のうち、div rotB は、div rot という
演算は自動的にゼロを与える div rotB = 0 ので落とせて、-divJ = (∂/∂t)ρ。
これで電荷保存則が証明された。回路の結束点ではρ=0 なので、これは
divJ = 0。キルヒホッフの電流則は、この式を電線経路に着目して表示しなおした
ものだ。ΣIi = 0。

歴史的には、マックスウェル以前から rotB = J は知られていたが、これでは
電荷保存を満たさないとを見抜き、彼はそれを rotB = J + ε(∂/∂t)E と修正した。
付け加えた項、ε(∂/∂t)E を偏移電流という。導体のないところでも、電界
の時間変化があれば電流と同等に磁界を作るわけで、空間中でも磁界が新たに発生
しうることを示す。このおかげで、電磁波という、真空中を伝わる波動の存在が
保障される。