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 患者が紹介状を持たずに大病院を受診した場合に支払う「特別料金」を引き上げる医療機関が相次いでいる。国の制度変更に伴い、料金を7千円以上に設定しなければならない施設の対象が広がったため。知らないままに受診した患者にとっては思わぬ負担を求められる可能性がある。

 国立病院機構「奈良医療センター」(奈良市)では、来年2月から初診時の特別料金を1650円から5350円増の7千円に引き上げる。愛媛県立今治病院(今治市)も来年以降、1650円から7千円以上に引き上げる予定。埼玉県にある春日部市立医療センターは特別料金を徴収してこなかったが、来年2月から7700円と設定した。窓口負担で最大600円が控除される負担軽減はあるが、それでも7千円以上の追加負担が求められる。

「1万1千円」の特別料金が求められる医療機関もあります。宮城県内では7千円以上の徴収が義務化されているのは14施設でしたが、18施設に増える見通しです。

 特別料金は「定額負担」と呼ばれ、窓口で支払う通常の医療費とは別に負担し、公的な保険制度も適用されない。国は大学病院などの大病院に患者が集中し過ぎないよう、2016年度から一部の大病院で徴収を義務化。22年10月から初診の場合は5千円以上(歯科は3千円以上)から7千円以上(歯科は5千円以上)に引き上げられた。 さらにこの「7千円以上の特別料金」が義務となる対象は、これまで大学病院などの「特定機能病院」(88施設)と、一定規模以上の「地域医療支援病院」(約600施設、一般病床200床以上)だったが、今年に入って新制度の「紹介受診重点医療機関」(200床以上に限る)に指定された医療機関にも広がった。このため相次ぐ引き上げの動きとなった。

 大病院に患者が集中すると医療スタッフの負担が重くなり過ぎ、本来担うべき専門的な医療に専念できなくなる。軽症や症状が安定している場合はできるだけ地域のかかりつけ医に診てもらいたいというのが特別料金を設定した国のねらいだ。交通事故で救急搬送されるなどやむを得ない場合は、紹介状なしでも特別料金を払う必要はない。

 ただ、患者側からは「念のために大きな病院に診てほしい」といった要望が根強い。現状では特別料金の周知は十分でないとみられ、患者が思わぬ負担を求められる場合も想定される。

どの病院でお金がかかる?「患者にはわかりづらい」
 山形大大学院の村上正泰教授