そもそも「売」と「買」って、語源は同じなんだよね。

「買」という言葉はあるものと別のものを取り替える意味である「貿」という言葉を語源としてて、
はじめボウと発音されていたが後になってバイと発音されるようになったんだ。
そして、もともとは売り買いの両方の意味に用いられていたこの言葉は、
後になって一方の買うの意味にのみ用いられるようになって、
他方の売るという意味には「買」という字にモノを差し出すという意味の「出」という文字を組み合わせてつくられた
「賣」という文字が使われるようになったんだ。
現在の「売」という字はこの賣という字の略字体なのね。
これは日本に限った話じゃなくて、ヨーロッパなんかでも「売」「買」に相当する言葉は同じ経緯で誕生してるんだ。

物々交換で社会関係が成り立っていた時代は、贈与と返礼の繰り返しによって財貨の交換を成立させていたんだよね。
贈与することが返礼の義務を負わせるワケで、「贈与」=「返礼」という図式。
与えることが同時に受け取ることを意味するから、「売る」と「買う」は同じ言葉で現されてたんだ。

それが文化の発展に伴って貨幣を介在するようになると、時間的・空間的に贈与と返礼が切り離されるようになって、
それらを同時に意味していた言葉も必然的に切り離されていったんだ。

こうした歴史的背景をみると、売る側と買う側に優劣なんてないんだよね。
本質的には対等なんだから、敬語を使うか否かなんてのはやはりその人間性による、と思うんだけど。
長々とごめんよ。