自然食の採用とその効果
「ステーキなどの肉は運動選手のスタミナをつける」という常識に広岡監督はかねてから疑問をもっていた。西武ライオンズチームを引受けるにあたり、選手と奥さんを合宿所に集めて、自然食の権威といわれる森下敬一氏の話を聞かせたのである。
 講演の骨子は、「自然な食べ物を、自然な状態のまま(無肥料、無農薬無添加物)で食べる。肉食や牛乳でスタミナがつくというのは大まちがい。かえって体に悪いし、日本人に合わない。玄米・雑穀・野菜をもっと多く食べる」ということに尽きる。
 最初のうちは選手たちは半信半疑でとまどいがちだったが、田淵が実行し中年パワーを見せつけ、大田卓司、山崎裕之、松沼(兄)、石毛が続き、というように、チーム全員に広がっていったという。もちろん選手たちの合宿所でも玄米や大豆、野菜を中心にしたメニュー(後出)である。
 自然食を続けるうちに、体重が3〜6キロ減って、しかも体調はひじょうによく、故障する選手が少なくなったという。ケガをしても回復が早く、すぐに戦列に復帰でき、夏バテも知らずに、ご存知のようにシーズンはじめから西武の独走状態になっていた。(あまり強すぎてパの野球はちっとも面白くない、といわれたくらいだ)