報道によって値下がりすることも

 不動産業界は、この「下がる」「暴落する」という言葉を恐れる。メディアでそのような観測記事が出たりすると、
それで客足が遠のき、売れ行きが落ち、結果として本当に値下がりが起きることもあるからだ。

 不動産業界側からすれば、これは「風評被害」というものだ。風評被害はあらゆる業界に起きる可能性がある。
だから、メディアも風評被害を発生させるような記事を避けようとするし、予測記事を書く場合も慎重になる。
「来年は車の売れ行きが落ち、値下がりするだろう」「携帯電話が値下がりするだろう」というような予測は、そう簡単に出すことはできないはずだ。

 だが不動産に関しては、なぜか簡単に「値下がり」報道が出てしまう。私は06〜07年ごろの現象が典型ではないかと考えている。
日本の不動産価格は06年にピークをつけ、07年に下落を始めたが、一度下落が始まると、
メディアは「もっと下がるぞ」という記事を書き立てることが多い。そうすると、適正な価格を超えて下落してしまうことがあるのだ。

販売センターは同じ価格で勝負している

 ところが、現在は多少「これから下がるぞ」という記事が出ても、それにつられるような形で下落することは起きていない。
つまり「風評被害」的なことは起きていない。13年以降、値上がりを続けた不動産価格が大幅下落に転ずることはなかった。

 その様子は11月16日の記事で、東京都品川区で分譲が始まった「パークシティ武蔵小山ザ・タワー」や、
JR三鷹駅直結の「グレーシアタワー三鷹」の例をあげて詳しく解説した。一部で「価格調整」をした物件はあったが、
多くは価格据え置き。販売センターへの来場者が少なくなっても、同じ価格で押し通す状況が続いている。

 マンション価格は、値下がりどころか、今、都心部を中心に再度の値上がりが生じ始めている。
だから、冒頭の「あのとき、思い切って買っておけばよかった」と後悔する人が出ているわけだ。
今回に限って言えば、多少の「下落観測記事」では抑えきれないほど不動産価格上昇のパワーが大きいのかもしれない
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20171129/biz/00m/010/016000c