先日、一緒に仕事をした編集者がぼやいていた。2年前に東京都文京区でマンションを買おうと思ったが、妻とその親が「これから下がるから、待て」と言うので、やめたというのだ。
 しかし結果は、逆に値上がりして、今はもう買えなくなってしまった。「メディアでも下がるという記事を見たが、
無責任に『値下がりする』というような情報は流さないでほしい」というのが、ぼやきの理由だった。

ちなみに私は2013年以降、一貫して「上がる」と言い続けているが、昨年から今年にかけては“少数派”になってしまった。
今年の夏に、あるラジオ局から「暴落しないと言っているのはあなただけ。その意見を聞かせて」という申し出があったくらいだから、少数派というより“異端派”とみなされていたようだ。

私以外の多くの評論家、専門家が「下がる」「暴落する」と言っているのだから、「住宅の価格は下がる」と信じてしまう人が増えるのは仕方のないことだろう。
そして、多くの人は「値下がりする」という情報の方を信じやすいという心理的傾向もある。

それを分かりやすく説明するために、逆のケースを考えてみよう。「値上がりする」「絶対、
もうかる」という話が出た時、人はまずは疑ってみるだろう。おいしい話にはのらないぞ、と誰でも思っている。

欲をかくと結果的に損をする。損をする可能性がある話は信じないようにしている。その
「損をすることを恐れる」気持ちが強いため、「下がる」「暴落する」という情報の方を信じたくなってしまうわけだ。