吃音
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苦しみ深く…社会の理解不可欠 アンケート記述欄
毎日新聞2016年8月16日 21時41分(最終更新 8月16日 21時59分)

 「吃音(きつおん)のせいで人生の歯車が狂った」「しゃべらないで済む職業を考えた」。
全国の吃音当事者を対象に毎日新聞が実施したアンケートの自由記述欄には、当事者の苦しみが切々とつづられていた。
そこからは、吃音に対する社会の理解を深め、当事者をさまざまなかたちで支援していくことの必要性が浮かび上がる。

 「どもりさんが発表しているんか」

 60代の行政書士の男性は小学2年の時、かけ算の九九の練習で言葉に詰まりながら発表していると、担任教師から笑いを誘うような雰囲気で
そう言われたという。アンケートで「屈辱感でいっぱいであった」と振り返る。

 言葉を発するようになって間もない2歳の時から吃音を抱え続けているという20代の無職男性は、症状が原因で幼稚園から中学校まで
同級生らから殴る蹴るの暴力を受けたと明かす。「教師も注意せずに見て見ぬふりをしていた。吃音を患っている多くの人々が苦しんでいることを考えてほしい」と訴えた。

 40代の非正規社員の男性は、電話口で会社名を言えず、勤め先を辞めた。自殺を考えたこともあり、今は心療内科に通院している。「人生の歯車が吃音という障害が
原因で大きく狂ってしまった」と苦しみを吐露した。

 現在、吃音は努力で完治する「癖」ではなく、脳の機能障害が原因だとする学説が有力だ。
だが「治す努力」を求められたことに苦しんだ経験を持つ人もいる。

 20代の女性は、会社の新人研修で行われたプレゼンテーションの練習で吃音の症状が出てしまい、最低評価を付けられた。全員の前で再度プレゼンをしたがうまくいかず、
「治せないのか」と指摘されたことがつらかったという。

 40代の男性会社員は「高校生の私が進路選択を考えていた時、しゃべらないで済む職業を考え、自分自身で可能性をどんどん潰していったことを後悔している」と告白。
若い吃音者たちに「自身の可能性を諦めないで」と呼びかけた。【遠藤大志】

ttp://mainichi.jp/articles/20160817/k00/00m/040/093000c