とにかくロック界の七不思議に数えられる現象としてビートルズ解散後のポールの作品に
深みがなくなったことがあげられるよね。別にひどいとか聴き応えがないわけじゃないんだけど、
ビートルズ時代にはあった深まりというか、いつまでも余韻が残り、聴くたびに新しい感動が
甦り、あるいは興奮で背筋がぞくぞくする、あのポテンシャルがなくなった。

 てことはすなわちポールにそれを供給していたのがジョン・レノンの視線だったという
早い結論になる。これはライバル意識でもあり共同作業でもあり、あの才能と拮抗し、
ぶつかりあいを続けることの難しさと意識の高さがどれほどのものだったのか、という
ことでもある。

 実際ビートルズ後のポールが肩の荷が下りたかのようにリラックスして音楽をやるように
なったのを視ても、レノンの存在とは誇りでもあり苦業でもあり、一種才能に畏怖や驚愕や
慎みを覚えるほどのものだったということ。あの才能に拮抗することの疲労も重ねていた
ことが分かる。

 やはりジョンという人はポールにとって大きかった。